セッション情報 ワークショップ11

高齢者総胆管結石の管理と治療の問題点

タイトル W11-5:

高齢者総胆管結石治療の有効性・安全性と今後の展望

演者 伊藤 由紀子(日本赤十字社医療センター消化器内科)
共同演者 高木 馨(日本赤十字社医療センター消化器内科), 辻野 武(日本赤十字社医療センター消化器内科)
抄録 【目的】高齢者の治療では安全性と低侵襲性が求められる.内視鏡的乳頭バルーン拡張術(EPBD)による内視鏡治療での切石の安全性・有効性について年代別に検討し,また従来のEPBDと昨今の内視鏡的乳頭Large Balloon拡張術(EPLBD)の成績を比較検討した.
【方法】対象は2013年9月までにEPBDによる治療をした総胆管結石711例(≦64歳(A群)228例,65~74歳(B群)168例,75~85歳(C群)216例,≧85歳(D群)99例).切石率・偶発症について各年齢群で比較検討した.また,近年は胆管径の太い大結石多数結石症例にEPLBDを施行しているが,結石径や数とマッチさせた従来のEPBDと比較検討した.
【結果】(1)各群のAmerican society of anesthesiologists physical status(ASA score)平均は1.48,1.87,2.22,2.38,抗凝固剤・抗血小板薬内服率は2.2,10.1,18.1,19.2%であった.平均胆管径は9.8,11.2,11.9,13.6mm,4個以上10mm径以上の多数大結石率は3.5,5.4,9.7,15.2%で年齢が上がるにつれて高い傾向にあった.(2)完全切石率には有意差はなかったが,高齢になるほど治療回数や時間が長い傾向にあった.(3)早期偶発症は,全体では7.0%,急性膵炎4.8%であり,年齢による差は認めなかった.全年齢群で出血は1例も認めなかった.しかし高齢者では,術中の血圧低下や誤嚥性肺炎といった偶発症や,入院中の急性心筋梗塞等による死亡も認めた.(4)EPLBDを施行した14例(年齢中央値85歳,ASA score平均2.2,胆管径・結石径・結石数中央値16.5mm,14mm,5ヶ)では,切石回数が1.38回と有意に少なく(EPBDでは2.2回),合併症も認めなかった.
【結論】1)低侵襲で安全な内視鏡治療は,高齢者にとっても有効である.特に高齢者では抗血小板剤・抗凝固剤内服例も多いため,出血の危険が少ないEPBDは良い選択枝と考える.2)EPLBDは施行回数も短縮でき,偶発症発生率も高くないことから,高齢者にも良い適応と考える.
索引用語