セッション情報 Research Forum1

炎症性腸疾患の病態と診断

タイトル RF1-1:

便中カルプロテクチンを指標とした活動期潰瘍性大腸炎に対するアサコールの有効性の評価と意義

演者 川島 耕作(島根大学第2内科)
共同演者 石原 俊治(島根大学第2内科), 結城 崇史(島根大学付属病院光学医療診療部), 園山 浩紀(島根大学第2内科), 多田 育賢(島根大学第2内科), 岡 明彦(島根大学第2内科), 楠 龍策(島根大学第2内科), 福庭 暢彦(島根大学第2内科), 大嶋 直樹(島根大学第2内科), 木下 芳一(島根大学第2内科)
抄録 【目的】近年,IBDの治療目標をmucosal healing(MH)に置く考え方が推奨されている.MHの評価法の中でも,便中カルプロテクチン(FC)の測定は非侵襲的で感度の高い方法である.一方,アサコールが活動性潰瘍性大腸炎(UC)に使用可能となり,UCに対する5-ASA製剤の有効な使用と効果判定が再考されている.今回我々は,UCに対するアサコールの臨床的有効性とMHにおけるFC測定の意義について報告する.【方法と結果】ペンタサ投与で寛解に至らない活動性UC症例に対しアサコールへ変更した39例を集計したところ,32例(82.1%)で寛解もしくは改善を認めた.またペンタサ4g/日の高用量投与例からアサコールへ変更した12例でも,9例(75%)で寛解もしくは改善が得られた.次に,FCをMHの評価の指標とした前向き研究を行った.2か月以上ペンタサ2250mg/日以上の投与にても活動期UC症例を対象とし,アサコール8週間投与を行った.アサコール投与前,投与4,8週後の臨床活動性スコア(CAI),投与前と投与8週後のFC,CRPにて評価した.エントリーされた全症例のCAIは,投与前に比較して投与4,8週後では有意に低下した.FCは投与前2368.1±3719.2μg/g,投与8週後(2例は試験中断時)495.8±644.0μg/gであり,有意に低下した(p=0.021).CRPは投与前後で有意な変化を認めなかった.【結論】ペンタサ投与で寛解に至らない活動性UC症例に対するアサコールの有効性が,症状のみならずFCを指標にした検討でも明らかとなった.FCはCRPよりも優れた効果判定の指標であり,非侵襲的なMHの評価に有用であると思われ,5-ASA治療においても治療戦略を立てる上での重要な判断材料になり得ると考えられた.
索引用語