セッション情報 | Research Forum1炎症性腸疾患の病態と診断 |
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タイトル | RF1-6:クローン病手術例の病態と手術成績は術前の抗TNFα抗体製剤の使用により影響を受けるか? |
演者 | 高橋 賢一(東北労災病院大腸肛門病センター) |
共同演者 | 舟山 裕士(東北労災病院大腸肛門病センター), 生澤 史江(東北労災病院大腸肛門病センター), 徳村 弘実(東北労災病院外科), 豊島 隆(東北労災病院外科), 西條 文人(東北労災病院外科), 松村 直樹(東北労災病院外科), 野村 良平(東北労災病院外科), 武藤 満完(東北労災病院外科), 安本 明浩(東北労災病院外科), 矢吹 慶(東北労災病院外科), 澤田 健太郎(東北労災病院外科), 柴原 みい(東北労災病院外科), 千年 大勝(東北労災病院外科), 望月 保志(東北労災病院外科) |
抄録 | 【背景】当院では術前に抗TNFα抗体製剤を使用していた症例は2010年以前にはクローン病(CD)手術例の19%であったが,2011年以降では55%と有意に増加した.術前の抗TNFα抗体治療は病勢制御によりクローン病(CD)手術例の病態を変化させうる一方,免疫抑制により手術成績に影響を及ぼしうる.【方法】平成17年~24年までに当院で腹部手術を行ったCD症例を対象とした.術前に抗TNFα抗体製剤投与を受けていた群(A群)28例と受けていなかった群(B群)46例の2群に分け,背景因子や手術適応・病態,手術成績をレトロスペクティブに比較検討した.【結果】年齢,性別,平均罹病期間,平均手術既往回数は両群間で有意差を認めなかった.病態では穿通型の頻度がA群では46%,B群では50%と有意差を認めなかった.両群とも各2例が癌合併例であった.緊急手術の頻度はA群が11%,B群が4%と有意差を認めなかった.平均手術時間はA群が352分,B群が267分とA群で長い傾向であり(p=0.08),平均出血量もA群が1099g,B群が398gとA群で多い傾向であった(p=0.08).A群では4例で出血量が2000gを超えていたが,うち3例は穿通型で直腸~小腸~十二指腸に広範な瘻孔を伴う症例や肛門管癌合併にて骨盤内臓全摘を要した症例が含まれていた.術後合併症発生率はA群46%,B群24%とA群で有意に高かった(p=0.04).うち感染性合併症はA群29%,B群15%とA群で高いが有意差はなかった(p=0.17).術後在院期間は両群間で有意差を認めなかった.【考察】術前の抗TNFα抗体製剤の使用により穿通型の頻度は減少しなかった.むしろ瘻孔の複雑化と進行癌合併により手術の困難さが増し合併症が増加したと考えられた.抗TNFα抗体製剤によるCDの治療の際には穿通型の合併症の発生に注意し,病態が複雑となる前に手術を考慮する必要がある. |
索引用語 |