セッション情報 Research Forum1

炎症性腸疾患の病態と診断

タイトル RF1-10:

炎症性腸疾患における静脈血栓症の頻度・危険因子と発症リスクの階層化に関する検討

演者 安藤 勝祥(旭川医科大学内科学講座消化器・血液腫瘍制御内科学分野)
共同演者 坂谷 慧(旭川医科大学内科学講座消化器・血液腫瘍制御内科学分野), 堂腰 達矢(旭川医科大学内科学講座消化器・血液腫瘍制御内科学分野), 田中 一之(旭川医科大学内科学講座消化器・血液腫瘍制御内科学分野), 藤林 周吾(旭川医科大学内科学講座消化器・血液腫瘍制御内科学分野), 上野 伸展(旭川医科大学内科学講座消化器・血液腫瘍制御内科学分野), 嘉島 伸(旭川医科大学内科学講座消化器・血液腫瘍制御内科学分野), 後藤 拓磨(旭川医科大学内科学講座消化器・血液腫瘍制御内科学分野), 笹島 順平(旭川医科大学内科学講座消化器・血液腫瘍制御内科学分野), 稲場 勇平(旭川医科大学内科学講座消化器・血液腫瘍制御内科学分野), 伊藤 貴博(旭川医科大学内科学講座消化器・血液腫瘍制御内科学分野), 盛一 健太郎(旭川医科大学内科学講座消化器・血液腫瘍制御内科学分野), 藤谷 幹浩(旭川医科大学内科学講座消化器・血液腫瘍制御内科学分野), 高後 裕(旭川医科大学内科学講座消化器・血液腫瘍制御内科学分野)
抄録 【背景】血栓症は炎症性腸疾患患者の生命予後を左右する合併症である.しかし,本邦での血栓症合併の頻度・危険因子は十分に明らかにされていない.
【目的】当科における炎症性腸疾患患者の静脈血栓症発症頻度とともに,危険因子を解析し,それに基づいた血栓症発症リスクの階層化を行う.
【対象・方法】2009年1月から2012年12月まで当科に入院した炎症性腸疾患患者158人,のべ271回の入院を対象とした(潰瘍性大腸炎(UC)53人71回,クローン病(CD)105人200回).血栓症発症頻度および危険因子についてretrospectiveに解析を行い,同定された危険因子に基づいて血栓症発症リスクの階層化を試みた.
【結果】1)静脈血栓症発症頻度は21/271例(7.7%)であった.UCでは13/71例(18.3%),CDでは8/200例(4%)と,UCに有意に多く発生していた(p=0.0001).2)背景因子の危険因子として年齢50歳以上(p=0.003),ステロイド投与(p=0.026),中心静脈カテーテル留置(p<0.001),周術期(p=0.011)が同定された.3)入院時血液検査所見の検討では,血清アルブミン3.0 g/dl以下(p<0.001),D-ダイマー1.5 ng/μl以上(p=0.002),C反応性蛋白(CRP)1.0 mg/dl以上(p=0.061)が危険因子であった.4)上記検討で同定された7つの危険因子のうち,5個以上,2~4個,0または1個を有する症例での血栓症発症頻度は,それぞれ72%,14%,0%であった.
【まとめ】炎症性腸疾患において静脈血栓症は7.7%に合併し,特にUCにおいては頻度の高い腸管外合併症としての認識が重要である.本研究で明らかにされた危険因子を5つ以上有する症例は血栓症の高リスク群としての認識が必要である.前向き試験を含めた症例の集積および疾患・発生部位毎での更なる検討が必要とされ,将来的に高リスク群への予防介入へとつながる.
索引用語