セッション情報 シンポジウム4(消化器がん検診学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

胃がん検診の理想的な住み分け:新しい検診方式を目指して

タイトル 内S4-13追:

胃癌症例からみたABC検診

演者 萩原 聡(しらかわ診療所・群馬消化器内視鏡医療センター)
共同演者 蘇原 直人(しらかわ診療所・群馬消化器内視鏡医療センター), 乾 純和(乾内科クリニック)
抄録 【はじめに】ABC検診は血清抗ピロリ菌IgG(以下Hp)抗体でピロリ菌感染の有無を調べ血清ペプシノーゲン(以下PG)値で萎縮性胃炎を診断し胃癌ハイリスク群を絞り込む方法である。健常人でのABC分類別の胃癌発生率の報告は多いが胃癌患者におけるABC分類の報告は少ない。今回我々は胃癌患者をABC分類し検討をおこなった。また胃癌患者の背景胃粘膜の内視鏡所見を検討した。【方法】2007年11月から2011年9月まで当院および近隣クリニックにて胃癌と診断され治療前にABC分類および内視鏡的に背景胃粘膜の萎縮パターンを分類した149例(早期胃癌136例,進行胃癌13例)を対象とした。ABC分類は胃がんリスク検診(ABC検診)マニュアルに沿って行いA群[Hp(-),PG(-)],B群[Hp(+),PG(-)],C群[Hp(+),PG(+)],D群[Hp(-),PG(+)]とした。内視鏡的萎縮パターンは木村らの分類を用いて検討した。【結果】胃癌患者を血清学的にABC分類するとA群 20例(13.4%), B群 38例(25.5%), C群 71例(47.7%), D群 20例(13.4%)であったが、A群のうち本来ABC検診の対象除外者であるピロリ菌除菌後の8例とPPI内服中の9例を除外すると純粋なA群は3例(2.0%)のみであった。また高崎市のABC検診に準じてPG I/IIのカットオフ値を≦3ではなく≦4にすると純粋なA群3例中2例はPG(+)となりD群に分類された。年齢,性別,腫瘍占拠部位,腫瘍形態,病理組織は各群間に差は認めなかった。背景胃粘膜は、萎縮がない症例 2例(1.3%),closed type 29例(19.5%),open type 118例(79.2%)であり、純粋なA群3例は全例にopen typeの胃粘膜萎縮を認めた。【結論】今回の検討でABC検診の内視鏡精査の対象から除外される可能性のある胃癌患者は3例(2.0%)であり、高崎市の基準では1例(0.7%)のみであった。また純粋なA群3例は全例に背景胃粘膜にopen typeの萎縮を認め、ピロリ菌既感染者である可能性が考えられた。ABC分類は胃癌ハイリスク群を絞り込むのに有用な方法である。精度を向上させるにはピロリ菌除菌、PPI内服の有無等の詳細な問診と検査のカットオフ値の検討が必要であると考えられた。
索引用語 ABC検診, 胃癌患者