セッション情報 ワークショップ17(消化器病学会・肝臓学会合同)

遺伝性肝胆膵疾患の病態と治療

タイトル 肝W17-3:

急性ポルフィリン症における遺伝子解析の意義

演者 前田 直人(鳥取大・機能病態内科)
共同演者 村脇 義和(鳥取大・機能病態内科), 堀江 裕(済生会江津総合病院・内科)
抄録 【目的】急性ポルフィリン症は、ヘム合成系に関与する酵素群の活性低下によってヘム前駆体のδ-アミノレブリン酸(δ-ALA)およびポルフォビリノゲン(PBG)が体内に過剰蓄積し、致死的ともなりうる急性内臓発作や精神神経障害を呈する遺伝性疾患である(光線過敏症などの皮膚症状を主徴とするいわゆる皮膚型ポルフィリン症とは区別される).我々はこれまでに各型ポルフィリン症の遺伝子解析を行ってきたが、今回急性ポルフィリン症のあらたな解析例を提示するとともに、その病態についても考察したい.【方法】急性ポルフィリン症が疑われた互いに縁戚関係のない本邦5症例(急性間欠性ポルフィリン症AIP3例、異型ポルフィリン症VP2例)を対象とした.このうち3症例は生化学的には否定的でありながら臨床症状のみからポルフィリン症を疑われた症例である.患者末梢血DNAを用いて責任酵素遺伝子の各エクソンを含む領域それぞれについてPCR増幅を行ったのち塩基配列を決定し、変異の有無を確認した.【成績】解析した5症例のうち、尿中δ-ALAおよびPBGの著増を示した2症例(AIP1例、VP1例)でそれぞれの責任酵素遺伝子に変異が同定された.さらにそれぞれの家系のDNA解析により次世代への遺伝が確認された.一方、尿所見に異常なく臨床症状のみから急性ポルフィリン症が疑われた残りの3症例には遺伝子変異は確認されなかった.【結論】急性ポルフィリン症における遺伝子解析は確定診断および家系内保因者の早期発見にきわめて有効な手段であるが、その一方で、疾患頻度、技術的な制約やコスト面での問題などから研究室レベルを脱していないのが現状である.すなわち、現時点では疾患スクリーニングを目的とした遺伝子解析はきわめて非効率的といわざるをえず、急性ポルフィリン症の初期診断には従来通り、発作時の尿中PBG(およびδ-ALA)検査のほうが簡便かつ有用であると考えられる.
索引用語 ポルフィリン症, 遺伝子解析