セッション情報 Research Forum2

炎症性腸疾患の治療戦略

タイトル RF2-2:

生物学的製剤の効果が減弱した難治性クローン病への対応

演者 遠藤 克哉(東北大学消化器病態学分野)
共同演者 木内 喜孝(東北大学消化器病態学分野), 下瀬川 徹(東北大学消化器病態学分野)
抄録 【背景】生物学的製剤(Biologics;Bio)であるInfliximab(IFX),Adalimumab(ADA)はクローン病(CD)治療の中心的存在になりつつあり,当科ではIFX:280例,ADA:67例の投与経験がある(2013/9/30現在).しかし,Bio効果減弱例,特にIFX・ADA両者無効例は治療に難渋し,現在のCD診療における最大の問題点となっている.今回,Bio効果減弱のため入院加療を要した難治性CDの治療経過を解析し,対応の実際と課題を考察した.【方法】2011年1月~2013年3月の間にBio効果減弱にて入院加療を要したCD49例を対象とし,臨床背景,入院治療内容と転機,退院後の寛解維持療法と長期予後をretrospectiveに検討した.【結果】全49例の平均年齢は35.5歳,平均罹病期間は10.4年,手術歴を29例(59.2%)に認めた.IFX単独効果減弱は32例(65.3%),ADA単独効果減弱は5例(10.2%),IFX・ADA両者効果減弱は12例(24.5%)であった.入院後35例(71.4%)で中心静脈栄養療法,13例(26.5%)で成分栄養療法を行った.精査にて17例(34.7%)は手術適応と診断し外科的治療を行った.手術適応病変のない32例は,栄養療法を中心とし,免疫調節剤(IM)の新規追加,IFX増量,Bioのスイッチ(IFX⇔ADA),タクロリムス投与等を行った.これら32例の入院期間はIFX・ADA両者効果減弱例で長い傾向にあった.全49例中,内科治療のみで退院が31例,外科手術ののち退院が17例,死亡が1例(CD関連死)であった.退院後のBio継続率は,IFX or ADA単独効果減弱例は97.3%(36/37例),両者効果減弱例は54.5%(6/11例)であり,Bio継続可能な場合に長期予後は良好な傾向がみられた.【考察】Bio効果減弱例では,手術適応病変の有無の検索が必須である.当科入院症例の約35%に手術適応病変が発見されていた.手術適応病変がない場合は内科的治療の組み合わせで寛解導入を図る.当科では入院の場合,栄養療法を中心に確実に寛解に導いた上でIM追加,Bio増量・スイッチ等を行い,可能な限りBioは継続している.Bio効果減弱をレスキューできる新規薬剤の登場に期待したい.
索引用語