セッション情報 Research Forum2

炎症性腸疾患の治療戦略

タイトル RF2-5:

活動期クローン病に対するアダリムマブの有効性と長期予後の検討

演者 吉村 直樹(社会保険中央総合病院炎症性腸疾患センター)
共同演者 酒匂 美奈子(社会保険中央総合病院炎症性腸疾患センター), 高添 正和(社会保険中央総合病院炎症性腸疾患センター)
抄録 【目的】生物学的製剤アダリムマブ(ADA)の保険認可によりクローン病(CD)患者の治療選択肢が増え,既存のインフリキシマブ(IFX)不耐,二次無効症例におけるCD症例の寛解導入率は向上したが,維持療法中の効果減弱,再燃例も少なくない.今回,ADAを導入したCD症例の治療成績を検証し有効性と長期予後について検討した.【方法】当院にてADAを導入した活動期CD86例(ストマ症例,術後維持目的は除く;平均CDAI:243.7±82.5)を対象としIFXナイーブ,不耐,二次無効例におけるADAの有効性と長期予後についてCDAIを用いて比較検討した.さらに,性別,年齢,罹病期間,成分栄養剤(ED),免疫調節薬併用の有無について多変量解析を行い,寛解維持に関与する因子を検討した.【成績】導入4週後の有効性を検証すると著効(CDAI<150かつ70以上のCDAI値の低下)47例(54.7%),有効20例(23.2%),無効19例(22.1%)であり77.9%が有効であった.a)IFXナイーブ例30例,b)一次無効例4例,c)二次無効例24例,d)不耐例28例あり,各群の有効率はa)群28/30(93.3%),b)群2/4(50.0%),c)群15/24(66.4%),d)群22/28(78.6%)でありIFXナイーブ例はスイッチ例に比べ有意に高い有効性を認めた(p<0.01).維持療法移行例63例をナイーブ(N)群26例とスイッチ(S)群37例に分け検証すると0,4,8,26,52週の平均CDAIが(S)群では244→116→124→138→122と推移し,20例(54.1%)で効果減弱(平均出現時期:26.2±16.8週)を認め9例が投与中止となったのに対し,(N)群は216→73→66→54→41と推移し,効果減弱例は4例(15.4%)のみでKaplan-Meier法にて2群間の非再燃率に有意差を認めた(p<0.01).また,非再燃率に関与する因子を検証するとEDの併用により維持療法中の非再燃率は有意に高くなった(p<0.05)が,他の因子では有意差を認めなかった.【結論】IFXナイーブの活動期CDにおけるADA療法は寛解導入率,維持率の向上に寄与する有用な治療戦略であり,EDの併用により非再燃率のさらなる向上が期待できることが示唆された.
索引用語