セッション情報 Research Forum2

炎症性腸疾患の治療戦略

タイトル RF2-6:

重症及び中等症潰瘍性大腸炎に対するTacrorimusの緩解導入効果とその因子の検討

演者 松下 正伸(名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学)
共同演者 安藤 貴文(名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学), 石黒 和博(名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学), 前田 修(名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学), 渡辺 修(名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学), 平山 裕(名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学), 森瀬 和宏(名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学), 前田 啓子(名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学), 古川 和宏(名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学), 舩坂 好平(名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学), 中村 正直(名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学), 宮原 良二(名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学), 後藤 秀実(名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学)
抄録 【目的】2009年7月にTacrorimus(Tac)が難治性潰瘍性大腸炎(UC)に適応となり,5年になろうとしている.現在ではcyclosporineやintensive cytapheresis,そしてinfliximabと共に,ステロイド抵抗性の重症例に対する重要な選択枝となっている.そこで,当院における重症及び中等症のUC症例に対する,Tacの緩解導入効果,導入に影響を与えた因子ついて検討した.【方法】対象はUC47例(重症20例,中等症27例).Tac投与は初日投与量0.1mg/kg,目標トラフ値10~15ng/mlとし,血中濃度に応じて投与量を調整した.治療効果判定はLichigerのClinical activity index(CAI)を用い,投与後のCAIが4以下を緩解,投与前より5以上の低下を有効とした.【結果】1週目時点で目標血中濃度に28例(60%),2週目時点で39例(83%)が到達.投与4週後では,28例(60%)の症例が緩解,有効6例(13%),無効12例(25%),浮遊感による投与中止が1例であった.重症度別に検討すると,緩解導入率は重症例65%と中等症56%,重症例において緩解導入率が高い傾向が見られた.絶食の有無について検討すると,絶食下では緩解導入率が有意に高かった(80%>49%).併用薬剤について検討すると,Prednisolone投与量は開始時平均18.2 mg,開始3カ月後は平均2.3 mgと,有意に低下していた.しかし投与量と緩解導入効果には関連はみられなかった.開始時にazathioprineを併用していた場合の緩解導入率は有意に高かった.4週後に寛解・有効となった33例は,3ヶ月後に27例が緩解を維持,3例が再燃,うち2例は外科手術となった.【結論】Tac投与4週間後の緩解導入,有効率は70%以上であり,その高い有用性が確認された.従来より緩解導入率を高めるために,早期の血中濃度を確立するための工夫がなされているが,絶食,Azaを併用することも有用である可能性が示唆された.
索引用語