セッション情報 Research Forum2

炎症性腸疾患の治療戦略

タイトル RF2-7:

難治性回腸嚢炎に対するタクロリムス注腸の効果

演者 内野 基(兵庫医科大学炎症性腸疾患センター)
共同演者 池内 浩基(兵庫医科大学炎症性腸疾患センター), 松岡 宏樹(兵庫医科大学炎症性腸疾患センター)
抄録 潰瘍性大腸炎術後問題には回腸嚢炎が挙げられ,難治性の場合には肛門機能に大きく影響し人工肛門を余儀なくされる場合もある.回腸嚢炎の治療には抗菌薬が第一選択として用いられることが多いが,無効の場合にはステロイドが使用される場合が多い.ステロイドは様々な合併症の原因となり,局所療法でもその影響は無視できない.そこでステロイドに変わる治療法を確立すべく抗菌薬抵抗性,難治性回腸嚢炎に対するタクロリムス注腸の安全性,有効性を検討することとした.【方法】慢性回腸嚢炎患者10人を対象に4-5mg/bodyタクロリムスを注腸で投与しその安全性,有効性をpouchitis disease activity index(PDAI)を用いて評価した.PDAI3点以上の減少を有効,寛解を0点とした.抗菌薬,ステロイド,免疫調節剤,生物学的製剤の併用は除外した.【結果】男女比8:2.肛門機能から回腸嚢炎発症までは24.5(2.1-101.2)か月であった.全例で10分間以上の注腸保持が可能であった.トラフ値は48時間後2.6(1.2-7.0)ng/ml,8week後3.8 ng/ml(1.2-8.2)であり,3名が注腸時の熱感を訴える以外に有害事象は見られなかった.1名で48時間後のトラフ値が13ng/mlで投与量を減量した.導入8week後PDAIスコアは15.9±0.8から7.8±0.8と有意に減少した(P<0.01).導入後8weekでは9/10が軽快し,3/10がPDAI7以下となっていた.しかしPDAI臨床症状スコアは5.5±0.4から0.8±0.6,(p<0.01)と有意に減少し効果的であったが,内視鏡スコアは5.4±0.2から3.9±0.2,(p<0.01),病理スコアは4.9±0.3から2.9±0.4,(p<0.01)と有意であったものの,寛解した症例はなかった.いずれもタクロリムス投与終了後に再燃したが抗菌薬への反応は回復した.【結語】難治性回腸嚢炎に対するタクロリムスは寛解導入には至らなかったがrescue効果は有すると思われた.有害事象はなく安全と考えられたが,注腸投与の意義,高トラフでの効果,維持療法など今後も検討が必要である.
索引用語