セッション情報 Research Forum2

炎症性腸疾患の治療戦略

タイトル RF2-8:

タクロリムス投与歴から検討した潰瘍性大腸炎に対するインフリキシマブ治療の有用性

演者 稲垣 尚子(横浜市立大学附属市民総合医療センター炎症性腸疾患センター)
共同演者 国崎 玲子(横浜市立大学附属市民総合医療センター炎症性腸疾患センター), 前田 愼(横浜市立大学大学院消化器内科学), 佐々木 智彦(横浜市立大学附属市民総合医療センター炎症性腸疾患センター), 高 蓮浩(横浜市立大学附属市民総合医療センター炎症性腸疾患センター), 木下 裕人(横浜市立大学附属市民総合医療センター炎症性腸疾患センター), 木村 英明(横浜市立大学附属市民総合医療センター炎症性腸疾患センター)
抄録 【目的】近年の複数の免疫抑制治療の登場により,保存治療で寛解導入される重症・難治潰瘍性大腸炎(UC)も増加した.一方,寛解導入後に再燃する難治例に対し,複数の免疫抑制治療をどのように選択しいつまで継続すべきかについてエビデンスはない.タクロリムス(Tacrolimus:Tac)治療歴からみた潰瘍性大腸炎に対するインフリキシマブ(Infliximab:IFx)治療の有用性を検討する.【方法】2010年8月~2013年9月にIFXを導入した活動期UC 56例を対象とした.IFXは5mg/kg/回,0,2,6週で寛解導入,その後8週毎に維持投与した.Partial Mayo Scoreで疾患活動性を評価,30%以上改善したものを臨床的有効とした.IFx開始後10,30,54週のIFx継続率と有効性を評価した.Tac治療歴を中心にこれらに影響を与える臨床因子を検討した.【結果】1)対象のIFx導入時の臨床背景は,男性28:女性28例,平均年齢35.6±14歳,平均罹病期間5.9±6年,疾患活動性(Partial Mayo Score)平均5.6点であった.前治療としてTac投与歴のあるもの34例(60%),ステロイド40例(71%)であった.2)10,30,54週での全体のIFx継続率は90.9%,50.9%,34.5%,有効率は57.1%,43.9%,35%であった.有効性に影響を与える臨床背景因子を検討したが,年齢,性別,罹病期間,病型,重症度で有意な因子を認めなかった.3)Tac投与歴別にみた検討では,有効率の8週の短期評価でTac投与歴なし群57.1%,あり群47.0%と有意差を認めた(p<0.05)が,54週の長期評価ではTac投与歴なし群35%,あり群45.8%と逆転していた.Tac投与歴なし群の中止理由の半数は,投与5週までに認めた投与時反応だった.【結論】活動期UCに対するIFx療法の治療成績は,Tac治療歴の有無で1年後の長期成績に差は認めなかった.切り替え直後の急性増悪による脱落が多く,この期間増悪させないための工夫が必要と考えられた.
索引用語