セッション情報 Research Forum3

肝炎の病態と内科治療

タイトル RF3-1:

全国国立病院による定点観測から明らかになったA型急性肝炎の変遷

演者 山崎 一美(国立長崎医療センター臨床研究センター)
共同演者 正木 尚彦(国際医療研究センター肝炎情報センター), 中村 陽子(相模原病院消化器内科), 鵜飼 克明(仙台医療センター消化器内科), 太田 肇(金沢医療センター消化器科), 中牟田 誠(九州医療センター消化器科), 高橋 正彦(東京医療センター消化器科), 高野 弘嗣(呉医療センター消化器科), 佐藤 丈顕(小倉医療センター肝臓内科), 室 豊吉(大分医療センター消化器内科), 長岡 進也(国立長崎医療センター臨床研究センター), 阿比留 正剛(国立長崎医療センター臨床研究センター), 小森 敦正(国立長崎医療センター臨床研究センター), 八橋 弘(国立長崎医療センター臨床研究センター)
抄録 【目的】我が国における過去33年間のA型急性肝炎の発生状況と重症度を検討した.【方法】全国国立病院機構34施設による急性肝炎の定点観測において,1980~2012年に登録した4,966例からA型急性肝炎1624例を対象とした.男875例(53.9%),年齢中央値37.0才(1-85),ALT中央値1580IU/L(44-66,912),Tbil中央値5.8mg/dL(0.4-32.4).【結果】1)1980~1995年までの年間発生数30例以上であった.とくに1983年,1989年,1990年,1991年には年間発生数100例以上の全国的流行が観測された.しかし1995年から発症数は漸減し2003年以降は年間20例以下で推移した.2)1994年までの発症例は全年齢を通じ毎年2-3月に集積したが,1995年以降季節的集積性は消失し,通年的に散布発生した.3)プロトロンビン時間(PT)40%未満かつ脳症を伴う劇症型は8例(0.5%),PT40%未満で脳症なしの重症型は64例(4.0%),これら以外の通常型は1547例(95.5%)であった.死亡例は2例であり,劇症型の25%,全症例の0.1%であった.4)1994年までの劇症および重症化率は21例/1209例(1.7%),1995年以降は51例/406例(12.6%)と高率だった(p<0.001).5)劇症化および重症化に寄与する因子をロジスティック回帰分析で算出,抽出因子は,発症年1995年以降(odds比8.1,p<0.001),高齢(odds比7.6,p<0.001)であった.【結論】我が国の急性A型肝炎は,1995年以降季節集積性を失いながら減少しているが,劇症および重症例の頻度は増加している.
索引用語