セッション情報 | Research Forum3肝炎の病態と内科治療 |
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タイトル | RF3-2:HBs抗原量を規定する可能性のある新たなウイルス要因:HBVポリメラーゼ領域Terminal Protein Domain aa15-17の変異 |
演者 | 内田 義人(埼玉医科大学消化器内科・肝臓内科) |
共同演者 | 神山 淳一(埼玉医科大学消化器内科・肝臓内科), 持田 智(埼玉医科大学消化器内科・肝臓内科) |
抄録 | 【目的】核酸アナログによる治療は経済的観点から中止が求められる場合がある.その基準はHBV-DNA量,HBs抗原量,コア関連抗原量を指標とするが,これらを満たす症例でも再燃が稀でない.我々は同中止基準の発表前に,病院IRBの認可でHBs抗原量を含まない基準による中止を検討し,ポリメラーゼ蛋白terminal protein domain(TPD)のアミノ酸変異も中止の指標として重要である可能性を見出した.【方法】HBe抗原陰性,HBV-DNA量2.1 Log未満,コア関連抗原が3.0 Log未満になったB型慢性肝炎34症例で核酸アナログを休薬した.ウイルス血症再燃の20例を対象として血清HBV-DNA量を経時的に測定し,その増殖速度と単離したHBV株の全塩基配列および全長DNAをHuh7細胞に導入した際の上清中DNA濃度を比較した.また,全例でHBV-DNA量が4.0 Log以上で核酸アナログを再開し,その後のHBs抗原量の動態を評価した.【結果】治療中止後に血清HBV-DNAの増加が速かった症例のHBV株は,何れもTPDのaa15-17がDDEで酸性アミノ酸が連続していた.しかし,遅かった症例では何れかが中性アミノ酸に変異したHBV株が見られた.Huh7細胞の上清中HBV-DNA量の上昇は,生体内の増加速度と相関していた.核酸アナログ再開でHBV-DNAは全症例で2.1 Log未満に低下したが,増殖速度の速い野生株の症例ではHBs抗原量が低下したのに対して,変異株の症例ではHBs抗原量の低下が見られなかった. 【結語】TPDのaa15-17のアミノ酸配列は生体内のみならずin vitroでもその増殖速度を規定していた.HBs抗原量が低下したにもかかわらず,核酸アナログを中止できなかった症例では,増殖速度の速い同領域の野生株であったことから,TPDの変異は田中班の提唱した3指標とともに中止基準として考慮する価値があると考えられた. |
索引用語 |