抄録 |
【目的】これまでの急性肝不全の治療の反応性を解析してあらたな治療法の開発を目指した.【対象と方法】対象は2004年以降に人工肝補助療法を含む集中治療の対象となった急性肝不全(acute on chronicを除く)65例である.治療は血漿交換に大量の置換液を用いた血液濾過透析(online法を含む)を組み合わせた人工肝補助に加えて,ほぼ全例に肝細胞破壊を早期に停止させる目的でステロイドパルスとその漸減を行った.さらに反応を見てシクロスポリンの持続静注も行った.これらの症例を対象に昏睡覚醒率,覚醒までの人工肝補助の回数,ASTの低下スピードを全例で検討し,さらに一部の症例では血液および持続的に解析した透析濾液から物質の除去量と緩衝液量との関係およびサイトカインのprofileの変化について解析を行った.【成績】65例中46例が生存し19例が死亡した.90%以上の症例で昏睡からの覚醒が認められた.覚醒までの血液浄化の回数は生存群で少ない傾向が認められた.グルタミンもサイトカインも大量に除去が可能で,グルタミンは緩衝液量に相関し細胞内からも大量に除去することが可能であった.またサイトカインprofileに病型/成因と関連した一定の傾向が見られた.ASTの低下は早期にステロイドパルス療法を開始した症例で有意に促進された.免疫抑制に関連した感染は主として,治療開始が遅れ肝炎が遷延し免疫抑制が長期にわたる症例と肝予備能の極度に低下した症例で認められた.【結論】人工肝補助療法は対症療法で,患者を覚醒させ安全な状態に保つのに有効な治療である.大量のグルタミン除去が脳浮腫の予防に関連すると考えられた.免疫抑制療法は早期に開始した場合に有効であり,肝細胞破壊を止めることは肝再生への必須条件であるが,治療開始が遅れ,肝予備能が低下した症例は感染のハイリスクで,早期に移植の可能性を考慮した対応が必要である.さらに免疫応答を詳細に解析することにより新たな治療の開発につなげたい. |