セッション情報 Research Forum3

肝炎の病態と内科治療

タイトル RF3-10:

肝硬変患者でのカルニチンの動態と肝性脳症への効果について

演者 白木 亮(岐阜大学医学部附属病院消化器内科)
共同演者 華井 竜徳(岐阜大学医学部附属病院消化器内科), 今井 健二(岐阜大学医学部附属病院消化器内科), 末次 淳(岐阜大学医学部附属病院消化器内科), 高井 光治(岐阜大学医学部附属病院消化器内科), 清水 雅仁(岐阜大学医学部附属病院消化器内科), 森脇 久隆(岐阜大学医学部附属病院消化器内科)
抄録 【目的】カルニチンは脂質を燃焼しエネルギーを産生する際に,脂肪酸をミトコンドリア内に輸送する役割をする物質である.生合成の低下のため肝硬変患者では欠乏しているとされ,近年ではレボカルニチン製剤による肝性脳症の改善効果も報告されている.しかしながら肝硬変患者でのカルニチンの動態について詳細な検討はされていない.今回血清および肝組織中カルニチン濃度を測定し動態について検討した.【方法】肝硬変患者58名(男:女 36:22名,年齢69.7±10.3歳,肝癌有:無 34:24名,Child分類 A:B:C 24:18:16名,血中アンモニア値69.9±42.9μg/dL)を対象とし,血清カルニチン分画を測定し,肝重症度や血液検査との関連につき検討した.また7例で肝組織中カルニチン濃度を測定し,5名の非肝硬変患者と比較検討した.さらに難治性肝性脳症の5例にレボカルニチン製剤を投与し効果の検討をした.【結果】1.血清総カルニチン濃度69.5±4.8μmol/L,遊離カルニチン濃度55.4±2.8μmol/L,アシルカルニチン濃度14.4±1.3μmol/Lであり,大部分の症例で基準値内であった.2.Child分類ではいずれのカルニチン濃度もChild分類CではChild分類Aより有意に高値であった.3.血液アンモニア値と血清カルニチン濃度の相関は認めなかった.4.血清と肝組織中カルニチン濃度は正の相関を認めたが,肝硬変患者と非肝硬変患者では差を認めなかった.5.難治性肝性脳症の5例にレボカルニチン製剤(900~1800mg/日)を経口投与したところ,血中アンモニア値は速やかに低下し,脳症も改善・維持可能であった.なお血清カルニチン濃度の上昇を認めた.【結語】肝硬変患者において,血清カルニチン濃度は大部分で基準値内であり欠乏の指標とはならず,カルニチン欠乏状態の評価法を検討する必要があると考えられた.一方,レボカルニチン製剤には難治性肝性脳症患者に対して血中アンモニア値を低下させる効果を認め今後多数例での検討が必要であると考えられた.
索引用語