セッション情報 Research Forum4

NAFLDの病態

タイトル RF4-1:

血中フコシル化タンパクは肝臓ballooning hepatocyteのバイオマーカーである

演者 鎌田 佳宏(大阪大学機能診断科学)
共同演者 竹原 徹郎(大阪大学消化器内科), 三善 英知(大阪大学機能診断科学)
抄録 【目的】非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)から非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を鑑別するためには現時点では肝生検による組織診断が必要である.脂肪化の程度,肝線維化の程度については種々の画像診断,血液バイオマーカーが存在するがballooning hepatocyteの存在を非侵襲的に診断する方法はこれまでなかった.一方,我々はAFP-L3に代表されるフコシル化タンパクが胆管側へと極性輸送されることをこれまでに報告してきた.ballooning hepatocyteでは細胞極性の破綻のためフコシル化タンパクが血管側へと漏れ出すことが予想される.今回血中フコシル化タンパクが肝臓ballooning hepatocyteの存在,程度と強く相関し,新規バイオマーカーとなりうることを見いだしたので報告する.【方法】健診受診した健常人23人と肝生検を施行した127人のNAFLD患者を対象に,フコシル化の標的タンパクとして我々がすでに同定したMac-2 binding protein(Mac-2bp)とフコシル化ハプトグロビン(Fuc-Hpt)の血中濃度を測定し,肝組織像と比較検討した.またすでにNASHバイオマーカーとして有用性が報告されているcytokeratin-18断片(M30)も測定した.【成績】Mac-2bp,Fuc-HptともにNASH診断能,線維化進展による病期診断能はM30より高かった.両者とも特に肝臓ballooning hepatocyteスコア(0-2点)と強い相関を認めた(Mac-2bp:1.15±0.57,1.76±0.97,2.37±1.35 μg/mL,P<0.01,Fuc-Hpt:119.8±226.0,363.3±539.7,792.7±1157.0 U/mL,P<0.01),多変量解析によりballooning hepatocyteの有無予測に対する有用性を検討したところMac-2bp,Fuc-HptはともにM30より有用性が高かった.特にフコシル化ハプトグロビンが有用であることがわかった.Mac-2bpはタンパクそのものを測定しており,フコシル化Mac-2bpのみを測定していないことが原因と考えた.【結論】血中フコシル化タンパクは肝臓ballooning hepatocyteの新規バイオマーカーである.
索引用語