セッション情報 Research Forum4

NAFLDの病態

タイトル RF4-6:

生活習慣が肝線維化と発癌に与える影響

演者 青木 智子(兵庫医科大学肝胆膵内科)
共同演者 飯島 尋子(兵庫医科大学超音波センター), 斉藤 正紀(兵庫医科大学肝胆膵内科), 榎本 平之(兵庫医科大学肝胆膵内科), 岩田 恵典(兵庫医科大学肝胆膵内科), 田中 教弘(兵庫医科大学肝胆膵内科), 池田 直人(兵庫医科大学肝胆膵内科), 會澤 信弘(兵庫医科大学肝胆膵内科), 西口 修平(兵庫医科大学肝胆膵内科)
抄録 【目的】糖尿病の第一死因は癌死で,最も多いのは肝癌である.近年,非B非C肝癌が増加しており,脂肪肝(以下FL)が肝線維化や発癌に与える影響を検討した.【方法】2008/10以降当院でFL及び非侵襲的線維化診断法(VTQ)を評価した4234例(FLなし/軽度/中等度/高度3020/700/393/121例)を対象として以下の検討を行った.(1)FL症例での肝障害の有無とVTQ値を比較検討した.(2)4234例中4か月以内に肝生検を行った1061例で,FLと相関する因子を検討した.(3)発癌歴のない慢性肝疾患905例を追跡し,経過中発癌した症例の特徴を多変量解析で検討した.【結果】(1)FLを有する1214例中300例で肝障害を認め,99例が病理学的にNASHと診断された.肝障害のない群では,FL軽度/中等度/高度の順にVTQ 1.37/1.25/1.43,肝障害のある群ではVTQ1.58/1.55/1.31(m/s)と肝硬度は高くなる傾向にあった.(2)FLの程度と相関する因子(相関係数R)を検討すると,BMI(0.418),BS(0.149),性(0.149),A因子(-0.143),年齢(-0.129),Plt(0.121),ALT(0.085),F因子(-0.069),発癌(N.S.)であり,FLは生活習慣病や肝炎症と関連する一方で,線維化・発癌とは関連しなかった(p<0.05).(3)肝発癌に至った症例の特徴として,多変量解析では男性,VTQ高値,高齢,BS高値,Plt低値が挙げられたが,FLは関連を認めなかった(p<0.001).VTQ<1.47m/sかつBS≦94mg/dlの場合,HCC発症率は0.53%(2/375),VTQ≧1.47m/sかつBS>94mg/dlの場合,HCC発症率は25%(28/112)であり,後者は46.9倍発癌リスクが高かった.【考察】NASHの中にはburnoutしている等の理由から超音波で全例がFLと診断できる訳ではないが,今回の検討では,FLが肝線維化・発癌に関与する結果は示せなかった.一方で生活習慣病(とりわけ高血糖)が発癌に強く影響していることが明らかとなった.【結語】FLは肝線維化・発癌に直接影響しないが,高血糖は肝発癌に一定の影響を与える可能性が示された.
索引用語