セッション情報 |
Research Forum4
NAFLDの病態
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タイトル |
RF4-8:NASHおよびNASH肝癌における血中胆汁酸分画測定とその意義
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演者 |
池上 正(東京医科大学茨城医療センター消化器内科) |
共同演者 |
本多 彰(東京医科大学茨城医療センター共同利用研究センター), 松崎 靖司(東京医科大学茨城医療センター消化器内科) |
抄録 |
【目的】非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)において,腸内細菌叢の変化が病因になっている可能性が指摘されており,動物モデルで二次胆汁酸の増加がSenescence-associated secretory phenotypeを誘発し肝発癌リスクが増加することが示されている.二次胆汁酸は腸内細菌によって生成されるため,末梢血の胆汁酸分画が腸内細菌叢を反映する血清マーカーとなる可能性がある.NASH患者(担癌患者n=6,非担癌患者n=12)での末梢血胆汁酸分画を測定し,健常者との違いを検討した.【方法】空腹時血清20μLに重水素標識された内部標準胆汁酸を添加した後,Bond Elut C18カラムにて胆汁酸を抽出し,LC-MS/MSにて分析を行った.【結果】健常人(n=40)における分画は,通常の5種類(CA,CDCA,DCA,LCA,UDCA)の胆汁酸の非抱合型が43.7%を占め,それらのグリシン抱合体が33.0%,タウリン抱合体が4.6%であった.その他に非抱合型の3-epi体が15.0%,ケト型胆汁酸が3.7%認められた.3-epi体では3-epi UDCAが最も多く57.4%を占めており,ケト型では7-oxo CDCA(UDCA)が22.6%と最多であった.通常の5種類の胆汁酸について総胆汁酸に占める非抱合型の割合は54.0%,3-epi体とケト型をすべて二次胆汁酸とした場合の二次胆汁酸が全胆汁酸に占める割合は50.8%であった.肝癌の合併がないNASHでは,総胆汁酸に占める非抱合型の割合は35.9%に低下していたが,二次胆汁酸が全胆汁酸に占める割合は51.4%と健常群と差がなかった.一方,肝癌を合併したNASHでは,総胆汁酸に占める非抱合型の割合が33.1%に低下すると共に,二次胆汁酸が全胆汁酸に占める割合も27.5%に低下していた.【結語】NASHにおいて,末梢血胆汁酸分画の有意な変化が認められた.非抱合型胆汁酸の割合の低下が担癌,非担癌にかかわらずNASH患者では特徴的であった.ただし,動物モデルで報告されている二次胆汁酸の増加はみられず,肝癌発生例ではむしろ低下していた. |
索引用語 |
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