セッション情報 Research Forum5

肝癌の内科・外科治療

タイトル RF5-9:

高度脈管侵襲を伴った肝細胞癌切除における術前単回肝動注療法の意義

演者 加藤 悠太郎(藤田保健衛生大学肝脾外科)
共同演者 棚橋 義直(藤田保健衛生大学肝脾外科), 新田 隆士(藤田保健衛生大学肝脾外科), 香川 幹(藤田保健衛生大学肝脾外科), 所 隆昌(藤田保健衛生大学肝脾外科), 杉岡 篤(藤田保健衛生大学肝脾外科)
抄録 [目的]高度脈管侵襲を伴う肝細胞癌の切除率は低く,切除例においてもその予後は不良である.当科では,Vp3/Vp4,Vv2/Vv3症例に対してcarboplatin,adriamycin,mitomycin(以下,CAM)の単回肝動注後に切除適応を決定し,良好な切除成績を得ているので報告する.[方法]これまでに60例のVp3/Vp4,Vv2/Vv3症例に対して肝切除+腫瘍栓摘出を行った.Vp4 30例中,対側2次分枝進展は13例に認め,肝切除とともに腫瘍栓のcoring outを行った.切除60例中,50例にCAM動注を行った.CAM動注例のうち24例は投与後2週間での画像および腫瘍マーカーの推移によりCAM有効と診断した(CAM有効例).術後生存率,再発についてCAM有効群,無効群,非施行群で比較検討し,高度脈管浸潤例切除後の予後規定因子を検討した.[成績]CAMの有害事象は殆どなかった.CAM非施行群,無効群,有効群の術後5年生存率は0%,0%,21%であり,各群の平均生存期間は3,6,30か月(p<0.0001)であった.術後3年無再発生存期間はそれぞれ0%,0%,18%であり,平均無再発生存期間は2,1.5,10か月であった(p=0.0037).以上より,CAM有効群は他の2群に比して有意に良好な成績であった.再発について:無再発5例はすべてCAM有効群であった.また肝外転移はCAM有効群において無効群に比して有意に少なかった.さらに再発後の生存期間もCAM有効例(中央値12.5か月)では有意に長かった(p=0.0012).多変量解析ではCAMへの反応性は術後全生存率(p=0.0074)および無再発生存率(p=0.045)に対する唯一の独立した予後規定因子であった.[結論]CAMへの反応性は高度脈管侵襲を伴う肝細胞癌切除後の独立した予後規定因子であった.CAMは簡便かつ安全な方法であり,患者選択に有用であるほか,その抗癌効果によって生命予後を延長している可能性が示唆された.
索引用語