セッション情報 Research Forum6

総胆管結石治療の最前線

タイトル RF6-6:

後期高齢者胆管結石に対する姑息的胆管ステント留置術の有用性とその問題点

演者 辻 国広(石川県立中央病院消化器内科)
共同演者 辻 重継(石川県立中央病院消化器内科), 太田 亮介(石川県立中央病院消化器内科), 竹田 康人(石川県立中央病院消化器内科), 朝日向 良朗(石川県立中央病院消化器内科), 中西 宏佳(石川県立中央病院消化器内科), 冨永 桂(石川県立中央病院消化器内科), 稲垣 聡子(石川県立中央病院消化器内科), 吉田 尚弘(石川県立中央病院消化器内科), 竹村 健一(石川県立中央病院消化器内科), 山田 真也(石川県立中央病院消化器内科), 岡田 俊英(石川県立中央病院消化器内科), 土山 寿志(石川県立中央病院消化器内科)
抄録 【目的】胆管結石の治療としてESTないしEPBDによる切石が確立しているが,高齢者や重篤な基礎疾患を有する症例においては姑息的な胆管ステント留置(EBS)も治療選択の一つとされている.しかしその明確な指針はない.今回はEBSの現状とその問題点を明らかにする.
【方法】2007年1月から2013年8月までにERCPを施行した後期高齢者(75歳以上)461例のうち,総胆管結石に対して完全切石を施行した145例(切石群)とEBSを施行した32例(EBS群)を対象に患者背景,治療成績,早期偶発症(膵炎・出血),長期偶発症(胆管炎の再燃)について比較検討し,さらにEBS群における胆管炎の再燃と各因子との関連性についてロジスティック回帰分析を行った.
【成績】患者背景は年齢中央値(切石群:82(75-94)歳,EBS群:86(75-100)歳)で有意差を認めたが(P<0.01),性別(切石群:男/女 78/67,EBS群:男/女11/21),心不全既往(切石群vsEBS群:10%vs16%),脳血管障害既往(23%vs25%),胃切除既往(12%vs22%),抗凝固薬内服(20%vs16%),抗血小板薬内服(33%vs19%)では有意差は認めなかった.胆管径(12mmvs15mm),結石径(9mmvs14mm),結石5個以上の症例(7%vs47%)の全てで有意差を認めた(P<0.01).治療内容では検査時間(44分vs26.5分),治療回数(1.1回vs1.0回)に有意差を認めた.早期偶発症(4.8%vs0%)では有意差は認めなかったが,胆管炎の再燃(10%vs41%)に有意差を認めた(P<0.01).EBS群における胆管炎再燃と各因子の関連性について多変量解析を行ったが,年齢・性別・胆嚢摘出症例・胆管径・結石径・結石数・ステント径のいずれも有意な因子ではなかった.
【結論】高齢者においてEBSは比較的安全に施行可能な手技であるが,胆管炎の再燃の危険性は高い.高齢者の総胆管結石に対する内視鏡治療においては,年齢,基礎疾患,長期偶発症のリスクを十分考慮した上でEBSを施行すべきである.
索引用語