セッション情報 Research Forum7

胃腫瘍診療の最前線

タイトル RF7-1:

慢性萎縮性胃炎および胃癌におけるIL-11遺伝子多型の検討

演者 鈴木 孝良(東海大学医学部消化器内科)
共同演者 中村 淳(東海大学医学部消化器内科), 仁品 玲子(東海大学医学部消化器内科), 木島 麻衣子(東海大学医学部消化器内科), 築根 陽子(東海大学医学部消化器内科), 内田 哲史(東海大学医学部消化器内科), 湯原 宏樹(東海大学医学部消化器内科), 五十嵐 宗喜(東海大学医学部消化器内科), 小池 潤(東海大学医学部消化器内科), 松嶋 成志(東海大学東京病院), 高木 敦司(東海大学医学部総合内科), 峯 徹哉(東海大学医学部消化器内科)
抄録 【目的】IL-11の作用は各臓器で多様であるが,胃癌においてその発現は増強し癌の浸潤や増殖に相関していることが報告されている.しかし,その遺伝子多型と胃癌の関連に関しては,ほとんどわかっていない.一方,萎縮性胃炎が進行すると胃癌のリスクが上昇することは多くの検討から明らかであるが,どのような患者で萎縮性胃炎が進行しやすく胃癌のリスクが高いのかは明らかではない.本研究では,胃癌,胃炎患者のIL-11遺伝子多型検索を行い,その差異からIL-11の胃癌への関与を検討する.【対象】当院を受診し本研究に対し書面にて同意が得られ,上部消化管内視鏡検査および病理組織学的検査にて診断された胃癌患者100例(男性79例,平均年齢72.3歳)と,内視鏡にて診断した慢性萎縮性胃炎患者102例(男性41例,平均年齢69.6歳)を対象とした.尚,本研究は当院臨床研究審査委員会の承認を得て施行された.血液サンプルからDNAを抽出し,IL-11遺伝子多型(rs4252555,rs1126760)をTaqManアッセイ法にて検索した.H.pylori感染率は,血清H.pylori IgG抗体法にて測定し,胃粘膜萎縮はペプシノーゲン法により判定した.【結果】胃癌群におけるIL-11(rs4252555)遺伝子多型は,G/G 82%,G/A 18%,A/A 0%であり慢性萎縮性胃炎群ではG/G 62%,G/A 35%,A/A 5%であり,胃癌群でA alleleが有意に少なかった(P=0.001).性・年齢にて補正したロジスティック回帰分析でもp=0.006であった.一方,IL-11(rs1126760)遺伝子多型は,胃癌はT/T 78%,C/T21%,C/C 0%で慢性萎縮性胃炎はT/T 72.5%,C/T 23.5%,C/C 2%であった(P=0.33).両群でH.pylori感染率に差はなく,ペプシノーゲン法では胃癌群で有意に陽性率が高かった.【結語】IL-11(rs4252555)遺伝子多型は,慢性萎縮性胃炎から胃癌に進展する過程に関与している可能性が示唆された.
索引用語