セッション情報 Research Forum7

胃腫瘍診療の最前線

タイトル RF7-2:

Stem cell nicheを用いたin vitro胃腺管3次元培養系の確立

演者 片野 敬仁(名古屋市立大学大学院医学研究科消化器・代謝内科学)
共同演者 溝下 勤(名古屋市立大学大学院医学研究科消化器・代謝内科学), 谷田 諭史(名古屋市立大学大学院医学研究科消化器・代謝内科学), 塚本 宏延(名古屋市立大学大学院医学研究科消化器・代謝内科学), 尾関 啓司(名古屋市立大学大学院医学研究科消化器・代謝内科学), 片岡 洋望(名古屋市立大学大学院医学研究科消化器・代謝内科学), 城 卓志(名古屋市立大学大学院医学研究科消化器・代謝内科学)
抄録 【目的】幹細胞研究の進歩に伴い,様々な組織における組織幹細胞の局在,分化過程が明らかとなってきたが,胃においては未解明な点が多いのが現状である.これは従来,正常胃粘膜上皮の培養が困難であり,幹細胞やprogenitor cellの分化過程を確認することを可能とする適切な培養法が存在しなかったことが一因である.われわれはstem cell nicheを含める形での胃腺管の長期培養を試みた.【方法】生後2日齢のマウス(C57BL/6J)の腺胃を氷上で切り出し,ミンチした後,コラーゲンゲルに包埋し,air-liquid interfaceの環境下で3次元的に培養し顕微鏡下に観察した.コラーゲンゲル内で培養された細胞をホルマリン固定の後,パラフィンに包埋し,薄切を行い,病理組織および免疫組織学的検討を行った.【結果】腺胃細胞はコラーゲンゲル内で外周を紡錘状の細胞に裏打ちされながらsphereを形成し,成長するのが観察された.HE染色では,sphere内腔は粘液を有する単層の円柱上皮によって構成されていた.免疫染色にてこれらの粘液を有する円柱細胞はMUC5AC陽性であり,surface mucous cellへの分化が示された.また一部にはenteroendocrine cellへの分化を示すchromogranin A陽性細胞も認めた.腸の形質のマーカーであるMUC2,CD10には陰性であった.Sphereの成長にはα-SMA陽性の紡錘形のstem cell nicheとしてのmyofibroblastの裏打ちが必須で,2ヶ月以上にわたり胃腺管の培養が可能であった.【結論】長期間にわたり正常胃腺管の分化増殖過程を模倣するin vitro培養系を確立した.ゲル内に包埋されたgastric stem cellが,必要なnicheを自然選択することで長期間の分化増殖を確認することを可能としていると考えられた.
索引用語