セッション情報 |
Research Forum7
胃腫瘍診療の最前線
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タイトル |
RF7-3:胃癌腹膜播種の成立における腹腔内遊離間葉系幹細胞の役割とその臨床的意義
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演者 |
北山 丈二(東京大学腫瘍外科) |
共同演者 |
江本 成伸(東京大学腫瘍外科), 山口 博紀(東京大学腫瘍外科), 石神 浩徳(東京大学腫瘍外科), 渡邉 聡明(東京大学腫瘍外科), 松崎 圭祐(要町病院) |
抄録 |
【目的】腹膜播種は胃癌の予後を規定する最も重要な因子であるが,成立機序には未知な点が多い.腹腔内に遊離した形で存在する間葉系細胞に注目し,播種成立における意義とこれを標的とした治療の可能性を検討した.【方法】胃癌患者の癌性腹水/洗浄細胞液を採取,遊離細胞を回収し,Type I collagen-coated plate上で培養,付着細胞群の機能を解析した.【結果】胃癌患者腹腔内にはCD45(-)CD90(+)細胞が少数存在し,その比率は播種患者で高かった(0.01~0.45%,vs 0.04~6.81%,p=0.001).このphenotypeを持つ細胞は高い運動能と増殖能を有し,2~3週間の培養にて大多数を占めるようになった.本細胞は通常培養では中皮細胞様の形態を示すが,至適培養条件下にて脂肪細胞,骨芽細胞などに分化し,T細胞の増殖を強く抑制することから,腹腔内に常在する間葉系幹細胞(Intraperitoneal mesenchymal stem cell,以下p-MSC)として機能している事が推測された.p-MSCはTGF-β刺激にてmyofibroblast様形態を示し,Collagen,α-SMA,FAP-αを強く発現,胃癌細胞株MKN45と共にnude mouse腹腔内に注入すると,播種の成立を増強した.組織所見では,蛍光標識した多数のp-MSCが播種巣内に取り込まれ,主に間質の線維組織に分布する事が確認された.Tyrosine kinase Inhibitor,dasatinibは10μM以下の濃度でp-MSCの増殖を強く抑制,MKN45は抑制しなかったが,In vivoで経口投与(25mg/Kg,14日継続)すると,播種の成立を有意に抑制し,dasatinib投与群の播種巣内の線維成分は対照群と比べ明らかに減少していた.【結論】p-MSCは腹腔内で遊離癌細胞の生育に適した線維性間質を誘導することにより,腹膜播種の成立を促進する.一般的に癌は間葉系幹細胞の有する再生機能を利用して転移巣を形成すると考えれば,従来の化学療法に間葉系幹細胞を標的とした薬剤を付加する事により,効果的な癌治療法の開発につながると考えられた. |
索引用語 |
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