セッション情報 | Research Forum7胃腫瘍診療の最前線 |
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タイトル | RF7-4:胃粘膜幹細胞マーカーLgr5発現のHelicobacter pylori除菌による変化 |
演者 | 竹田 幸祐(奈良県立五條病院消化器病センター) |
共同演者 | 森安 博人(奈良県立五條病院消化器病センター), 松本 昌美(奈良県立五條病院消化器病センター), 森岡 千恵(奈良県立五條病院消化器病センター), 明石 陽介(奈良県立五條病院消化器病センター), 堀内 葉月(奈良県立五條病院消化器病センター), 中西 啓祐(奈良県立五條病院消化器病センター), 中谷 聡(奈良県立五條病院消化器病センター), 吉川 正英(奈良県立医科大学病原体・感染防御医学) |
抄録 | 【目的】H.pylori(Hp)感染症は萎縮性胃炎の進展過程で幹細胞に影響し,幹細胞の胃型から腸型への変化すなわち腸上皮化生と進展に深く関与している.一方,Hp感染は炎症反応を通して強力なプロモーション作用を示し発癌を促進すると考えられている.今回,胃粘膜幹細胞マーカーLgr5の発現についての除菌前後の変化を検討し,Hp感染による発癌のリスクについて考察した.【方法】当院の除菌成功例のうち,除菌前後に内視鏡にて経過観察し経時的に追跡しえた41症例について,萎縮パターン(木村竹本分類)などの内視鏡所見を検証した.さらに,生検が施行された21症例では胃粘膜幹細胞マーカーであるLgr5の発現の変化を検討した.【結果】1)男性20例,女性21例,H.pylori除菌時の平均年齢64.2±23.3歳で,平均観察期間3.5年であった.除菌対象疾患は胃潰瘍15例,十二指腸潰瘍13例,早期胃癌2例,その他11例であった.2)除菌前の萎縮パターンはCloseタイプ22例(C1 9例,C2 2例,C3 11例),Openタイプ19例(O1 10例,O2 2例,O3 7例)であった.除菌後に3例はopenパターンからcloseパターンに改善し,腸上皮化生の改善した症例も認めたが,3例では除菌後に早期胃癌が発症した.3)Lgr5の発現を検討した21例のうち,除菌により16例(76%)減少,2例(10%)で不変,3例(14%)で増加が見られた.減少した16例では除菌前のLgr5の発現が除菌前46±23%,除菌後15±10%と有意に減少した(P<0.01).胃癌症例では粘膜内Lgr5は高発現を示した.また,除菌後Lgr5が増加し,高発現が続いた症例では早期胃癌の発生が認められた.【結論】Hp除菌により萎縮粘膜は改善し,腸上皮化生の進行を抑制する傾向を認め,粘膜幹細胞マーカーLgr5発現は76%の症例で減少した.除菌後Lgr5高発現で,除菌により減少しない症例は癌ハイリスク症例として慎重な経過観察が必要である. |
索引用語 |