セッション情報 Research Forum7

胃腫瘍診療の最前線

タイトル RF7-9:

Multiplex-ligation-dependent probe amplificationを用いた胃癌における分子標的の準網羅的検索

演者 大井 章史(金沢大学大学院医学研究科分子細胞病理学)
共同演者 藤村 隆(金沢大学大学院医学研究科がん局所制御学)
抄録 【目的】遺伝子増幅は点突然変異,染色体転座とならんで癌原遺伝子が癌遺伝子にかわる重要な遺伝子変化の一つである.受容体チロシンキナーゼをコードするHER2,EGFR,FGFR2,METや,p53の分解蛋白をコードするMDM2はいずれも胃癌をふくむ各種の癌で増幅がみられており,すでに分子標的薬が臨床応用されているか,開発中である.本研究では,胃癌における,これらの遺伝子蛋白に対する分子標的治療を視野にいれて,上記5遺伝子と固形癌で頻繁に遺伝子増幅が知られている21遺伝子について,胃癌における遺伝子増幅の頻度を知ることと,この検索に,PCRを応用した新しい遺伝子増幅検索法multiplex-ligation-dependent probe amplification(MLPA)の有用性を知ることを目的とした.【方法】金沢大学消化器外科で連続的に手術された胃癌176例について検討した.代表的なホルマリン固定パラフィン包埋癌組織切片からDNAを抽出し,2つのMLPAキット(MRC-Holland)を用いて,固形癌で増幅頻度の高い26の遺伝子について,遺伝子増加・増幅の有無を検索した.増加・増幅の見られた遺伝子については,さらにfluorescence in situ hybridization(FISH)による検討を行った.【成績】MLPAでスクリーニングし,FISHで確認した主な遺伝子増幅はHER2(20例),FGFR2(3),EGFR(2),MDM2(4),MET(1),MYC(4),CCND1(4),TOP2A(7)であり,種々の組み合わせで複数の遺伝子の,同一腫瘍内の異なる癌細胞内,あるいは,同一細胞内,同一アンプリコン上での同時増幅がみられた.【結論】個別化した分子標的治療には,単一の遺伝子異常の検索のみでは不十分であるが,一方,数百万個のプローブを含むマイクロアレイを用いた検索は臨床的では無い.MLPAでは,標的およびその関連遺伝子の異常を一回の反応で準網羅的に知ることが可能で,FISHと組み合わせることで,分子標的薬の選択において,有意義な情報が得られると結論された.
索引用語