セッション情報 口演

食道癌基礎

タイトル O-006:

臨床,実験検討よりみた食道癌におけるCOX2 inhibitor投与の意義

演者 橋本 直樹(近畿大学保健管理センター)
共同演者
抄録 (目的)食道癌の生存率は今なお不良であり,改善するためには,予防的そして斬新的な治療法が必要である.我々は,COX2が食道癌の治療と予防のためのmolecular targetになりうる可能性を実験と臨床データより報告する.(方法)(A)実験:8週のWistar系ラットに対して,胃全摘後,食道十二指腸吻合(EDA)を行い,十二指腸液の食道への逆流モデルを作成した(n=30).対照群としてsham ope(Control)(n=10)とした.術後40週目に,犠死させ,食道組織のHE,COX2,PCNA,PGE2,食道内の胆汁酸を測定した.(B)臨床データ:2-3領域のリンパ節郭精を行った食道扁平上皮癌68例に対して,COX2と臨床病理学的関係を検討した.(結果)(A):EDA群では,術後40週目にcolumnar dysplasiaが100%,SCC 35%,ADC 30%認められ,COX2のoverexpression,PGE2,PCNA LI,食道内の胆汁酸はcontrolに比し有意の高値が認められた.以上より,食道への胆汁酸の逆流→COX2→PGE2→PCNA LI→ADC,SCCの構図が想定された.(B)400倍にて顕鏡し,腫瘍細胞の内,20%以上が染色されるstrong,20%以下をweakとした.41例がstrong,27例がweakであった.男女差,年齢,腫瘍の位置,ly,v因子においては両群において差は認めなかったが,腫瘍の分化度,腫瘍の深さ,リンパ節転移,TNMにおいては両群に有意差を認め,strongな症例程,未分化で深達度が深く,リンパ節転移も多く,stageの進行した症例に多く認められた.又180,420,660日のkaplan-meierにおいてもstrong(91.2,70.6,58.8%)weak(95.5,90.7,85%)と有意に予後不良であった.(結語)COX2は食道癌の発生と進行に関与し,COX2 inhibitorは予防または臨床食道癌の治療に用いられる可能性が見出された.
索引用語