セッション情報 口演

食道癌基礎

タイトル O-007:

食道癌細胞におけるvalproic acidの放射線誘導性上皮間葉転換(Epithelial to Mesenchymal Transition;EMT)抑制効果の検討

演者 金本 斐子(金沢大学消化器・乳腺・移植再生外科)
共同演者 二宮 致(金沢大学消化器・乳腺・移植再生外科), 岡本 浩一(金沢大学消化器・乳腺・移植再生外科), 中沼 伸一(金沢大学消化器・乳腺・移植再生外科), 酒井 清祥(金沢大学消化器・乳腺・移植再生外科), 木下 淳(金沢大学消化器・乳腺・移植再生外科), 牧野 勇(金沢大学消化器・乳腺・移植再生外科), 中村 慶史(金沢大学消化器・乳腺・移植再生外科), 林 泰寛(金沢大学消化器・乳腺・移植再生外科), 尾山 勝信(金沢大学消化器・乳腺・移植再生外科), 井口 雅史(金沢大学消化器・乳腺・移植再生外科), 中川原 寿俊(金沢大学消化器・乳腺・移植再生外科), 宮下 知治(金沢大学消化器・乳腺・移植再生外科), 田島 秀彦(金沢大学消化器・乳腺・移植再生外科), 高村 博之(金沢大学消化器・乳腺・移植再生外科), 北川 裕久(金沢大学消化器・乳腺・移植再生外科), 伏田 幸夫(金沢大学消化器・乳腺・移植再生外科), 宮本 正俊(金沢大学消化器・乳腺・移植再生外科), 藤村 隆(金沢大学消化器・乳腺・移植再生外科), 太田 哲夫(金沢大学消化器・乳腺・移植再生外科)
抄録 【背景】近年,癌細胞の浸潤・転移の過程において上皮間葉転換(EMT)が重要な役割を担っている事が分かってきた.我々は,以前より食道癌細胞における放射線誘導性EMTの検討を行ってきた.今回HDAC阻害剤であるvalproic acid(VPA)のEMT抑制効果とその抑制メカニズムを検討した.【方法】食道扁平上皮癌細胞株であるTE9,TE10,TE11と当科にて樹立したヌードマウス移植可能食道扁平上皮癌細胞株KESを使用した.各細胞に放射線照射を行い経時的な細胞形態変化及び,EMTマーカーの発現状況を免疫染色により評価し放射線誘導性EMTを検討した.更に浸潤能の変化をinvasion assayにより評価した.細胞形態変化の最も顕著であった照射48時間後の蛋白を用いWestern blotting法にて上皮間葉系マーカー蛋白質の発現状況を解析した.またVPA投与による放射線誘導性EMTの抑制効果を検討した.【結果】放射線照射後,細胞形態は紡錘形へと変化し細胞間接着は減少した.免疫染色においては,E-cadherinの発現低下,Vimentinの発現増強を認めた.また浸潤能は有意に増加した.Western blottingにおいては放射線照射により,上皮間葉系マーカーの増減のみならず,その上流の転写調節因子であるp-smad2,p-smad3,snail,twist,slugの増加を認めた.更に,低酸素誘導因子HIF1α,MMPの発現増加も認めた.全ての食道癌細胞株における放射線誘導EMT及び浸潤能の増加はVPA投与により抑制された.【結論】放射線照射により食道癌細胞株においてEMTが誘導され,その変化はVPA投与により抑制された.VPAは放射線照射により誘導される食道癌の浸潤・転移を制御し,総合的に放射線治療効果を増強する可能性が示唆された.
索引用語