セッション情報 口演

食道癌基礎

タイトル O-008:

食道癌肉腫発生における上皮間葉系移行関連転写因子の検討

演者 中澤 拓郎(群馬大学大学院医学系研究科病態病理学分野)
共同演者 伊古田 勇人(群馬大学大学院医学系研究科病態病理学分野), 信澤 純人(群馬大学大学院医学系研究科病態病理学分野), 横尾 英明(群馬大学大学院医学系研究科病態病理学分野)
抄録 【目的】上皮間葉系移行は,胎生期発生,創傷治癒,線維化等に関して重要な役割を担っており,近年,様々な臓器の悪性腫瘍において,転移や浸潤などのプロセスに関しても,重要な役割を担っていることが明らかとなってきている.一方で食道癌肉腫は稀な組織型とされている.組織学的には癌腫と肉腫が混在した組織形態を示し,共通の前駆細胞からの発生が示唆されているが,その病理発生や腫瘍進展に関して充分な検討が行われていない.今回我々は,食道癌肉腫の腫瘍発生における,上皮間葉系移行の関与について検討を行った.【方法】食道癌肉腫症例11例に関して,癌及び肉腫の両成分間におけるE-cadherinの発現及び,上皮間葉系移行関連分子である転写因子Slug,Twist,ZEB1,ZEB2の発現を,免疫組織染色を行い比較,検討した.両成分を強拡大10視野観察し,以下のようにスコアリングを行った:0;0%,1;<10%,2;11-50%,3;51-80%,4>80%.判定は,線維肉腫をSlug,Twist,ZEB1,ZEB2の陽性コントロールとして用い,核への染色を陽性と判断した.またE-cadherinに関しては,検体内の正常食道粘膜を陽性コントロールとして用い,細胞膜への染色を陽性と判断した.【結果】食道癌肉腫の癌:C,肉腫:Sにおいて,11症例の平均スコアはSlug[C;S=1.81;2.18],Twist[C;S=3.09;3.81],ZEB1[C;S=0.63;3.81],ZEB2[C;S=1.72;2.45],E-cadherin[C;S=3.18;0.09]であった.【結論】肉腫成分においてE-cadherinの消失が認められた.Twist,Slug,ZEB1,ZEB2は癌成分と比較し,肉腫成分で発現がより上昇しており,癌肉腫発生におけるこれら分子の関与が示唆された.ZEB1は最も両成分間で発現に差が認められており,肉腫成分の発生に関して,特にZEB1の強い関与が示唆された.これらの転写因子が関与する上皮間葉系移行のメカニズムは,今後の治療対象となる可能性がある.今後さらに症例を蓄積して検討する必要がある.
索引用語