セッション情報 口演

食道癌基礎

タイトル O-010:

血清p53抗体検査による食道癌の臨床分子病態解析

演者 島田 英昭(東邦大学医学部外科学講座)
共同演者
抄録 【背景と目的】食道癌診療では,早期診断,放射線・抗癌剤感受性予測,再発リスク診断などに利用でき,簡便で数値化可能である分子腫瘍マーカーが有用であると思われる.血清p53抗体検査は,腫瘍細胞における変異p53抗原の抗体反応を利用した分子診断方法であるため,微小腫瘍細胞を認識し,p53分子機能を反映することから,従来の分泌型腫瘍マーカーと全く異なる分子病態診断法であるといえる.本邦では2007年10月1日から保険収載され広く実診療に使用されているが長期予後を含めた詳細な検討は十分ではない.本報告では,現在までに明らかとなった臨床上の有用性と今後の可能性を紹介する.【対象と方法】解析対象は,食道癌患者466例,健常者975例である.食道癌患者では治療開始前ならびに治療後の定期的モニタリングを行った.【結果と考察】健常者における疑陽性率は男5.5%,女3.8%であり,60歳以上3.0%,60歳未満6.1%であった.食道癌全症例での陽性率は30.3%(141例)であり,stage別陽性率はstage I/II/III/IV=23/25/21/36%であった.stage I/IIにおいては,SCC-Ag,CYFRA21-1よりも有意に陽性率が高い.血清抗体はp53タンパクの過剰発現ならびに遺伝子変異との相関関係を有することを反映して抗癌剤・放射線治療抵抗性と相関する.多変量解析では,リンパ節転移,予後不良のリスク因子であり,再発症例での治療抵抗性を反映する.根治切除術後に抗体価が低下しない症例で高率に再発を認める.特に抗体価が10U/mlを越える症例では再発率が高く極めて予後不良である.【結語】血清抗体型腫瘍マーカーは,従来の分泌型腫瘍マーカーと比較して早期の段階から陽性となることがあり,分子病態を反映することから治療効果の予測や手術後の再発危険群の選別などにも有用な新しいタイプのバイオマーカーである.
索引用語