セッション情報 口演

食道癌,外科的治療

タイトル O-016:

高齢者食道癌に対する胸腔鏡下食道切除術の有用性と治療成績

演者 竹村 雅至(兵庫医科大学上部消化管外科)
共同演者 海辺 展明(兵庫医科大学上部消化管外科), 山下 英孝(兵庫医科大学上部消化管外科), 瀧井 麻美子(兵庫医科大学上部消化管外科), 吉田 佳世(兵庫医科大学上部消化管外科), 仁和 浩貴(兵庫医科大学上部消化管外科), 大嶋 勉(兵庫医科大学上部消化管外科), 菊池 正二郎(兵庫医科大学上部消化管外科), 笹子 三津留(兵庫医科大学上部消化管外科)
抄録 食道癌手術に鏡視下手術が導入され約20年が経過したが,高齢者に対する本術式の有用性についての報告は少ない.そこで今回,75歳以上の高齢者食道癌症例に対する本術式の治療成績について検討したので報告する.(対象と方法)2000年1月から2011年12月までに,鏡視下食道切除再建術を施行した305例中75歳以上の38例(12.5%)を対象とし,短長期成績について検討を行った.(結果)対象年齢中央値は76歳で,男性31例・女性7例であった.術前に併存疾患がないのは18例(47.3%)のみで,循環器疾患合併例が15例と最も多かった.術中に重篤な合併症はなく,開胸へ移行したのは1例のみで,腹部操作も33例で鏡視下に行った.手術時間は379分(胸部:148分)で,出血量は425ml(胸部:160ml)であり,郭清個数は25個であった.術後合併症は17例(44.7%)に発症し,縫合不全:5例,胃管壊死:4例,肺炎:4例,反回神経麻痺:2例,乳糜胸:1例で,末梢の臓器循環と喀痰排出力の障害によるものが多かった.病理組織学的な深達度はpT1a/pT1b/pT2/pT3/pT4:4/9/6/18/1例で,リンパ節転移は19例に認めた.進行度は,0/I/II/III/IV:3/8/11/14/2例であった.術後在院日数の中央値は35日であるが,在院死亡例はなかった.死亡原因のうちわけは,他病死が最も多く7例(肺炎2例,他癌死2例を含む)であり,その他血行性再発6例,リンパ節再発4例,播種再発1例であり,他病死の割合が高かった.全例の5年生存率は42.7%であった.(結語)外科的治療を適応する高齢者食道癌症例は今後とも増加すると思われるが,胸腔鏡下食道切除術は高齢者でも安全に施行可能である.しかし,術前併存疾患を有している症例が多く,術前から術後合併症軽減のための努力を要する.また,長期経過例では他病死の割合が高いが,食道癌術後に多い肺炎死亡例は少数である.
索引用語