セッション情報 口演

食道癌,外科的治療

タイトル O-018:

腹臥位用気管鈎とneedle instrumentによる視野展開を利用した胸腔鏡下食道切除術

演者 中島 政信(獨協医科大学第一外科)
共同演者 里村 仁志(獨協医科大学第一外科), 高橋 雅一(獨協医科大学第一外科), 室井 大人(獨協医科大学第一外科), 百目木 泰(獨協医科大学第一外科), 大塚 吉郎(獨協医科大学第一外科), 小野寺 真一(獨協医科大学第一外科), 尾形 英生(獨協医科大学第一外科), 山口 悟(獨協医科大学第一外科), 佐々木 欣郎(獨協医科大学第一外科), 加藤 広行(獨協医科大学第一外科)
抄録 【目的】胸腔鏡下食道切除術においては,特に上縦隔郭清の際の視野展開が重要であるが,腹臥位では右側臥位よりも気管左側の展開が困難であるとされている.これを克服するため,我々は12mmポートから出し入れ可能な腹臥位手術用の気管圧排鈎を開発し,更にneedle instrumentを用いて食道を牽引することで視野の展開を行っている.その有用性について検討した.【方法】体位を腹臥位とし,原則として第3肋間中腋窩線,第5肋間後腋窩線,第7肋間後腋窩線,第9肋間肩甲下角線上に各々12mmポートを,第7肋間肩甲下角線上に5mmポートを挿入する.上縦隔左側の郭清の際に,第3肋間中腋窩線もしくは第5肋間後腋窩線上の12mmポートから当科で開発した細経の腹臥位用気管圧排鈎を挿入し,気管を患者の右側に牽引・展開し,左反回神経の前方までを露出し,106recLを郭清する.この際,食道を切断せずに,Mini Loop Retractor IIやEndo Surgi Retractorを用いて食道を牽引し,これによるカウンタートラクションも利用して郭清を行っている.さらにこの気管圧排鈎は,106recR郭清の際の迷走神経の牽引や鎖骨下動脈の牽引・圧排にも利用できる.食道を切断しないことで,腫瘍の横断を防止したり,より確実なen bloc郭清につながるものと考えている.【結果】2011年から上記方法を用いて45例に胸腔鏡下食道切除術を行い,平均4.4個の106recLを含めた,平均26.3個の縦隔リンパ節を摘出している.術後の反回神経麻痺は左側が20.0%(9/45例),右側は0%であった.これまで106recLを含め,縦隔内再発をきたした症例は認めていない.また,気管の損傷も全例で認めていない.【結論】当科で開発した気管圧排鈎および離断しない食道自体を利用した視野展開は,確実にリンパ節を覚醒することが可能とし,腹臥位胸腔鏡下食道切除術をより施行しやすくするものであると思われる.
索引用語