セッション情報 |
ワークショップ17(消化器病学会・肝臓学会合同)
遺伝性肝胆膵疾患の病態と治療
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タイトル |
肝W17-4:ウイルソン病の実地診療での問題点
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演者 |
原田 大(産業医大・3内科) |
共同演者 |
本間 雄一(産業医大・3内科), 柴田 道彦(産業医大・3内科) |
抄録 |
【目的】ウイルソン病は常染色体劣性遺伝により遺伝する銅代謝異常症である。肝細胞から胆汁中への銅排泄障害が原因で、患者は約3万人に1人の頻度で存在する。本疾患は治療可能な代謝異常症であり、適切に診断し治療すれば予後は極めて良好である。しかし、本疾患の診療には未だいくつかの問題が存在する。医師側の問題として認識不足、患者側の問題として怠薬である。今回、実際の症例を通じてこの点に注意を促したい。【対象】2009年から2012年までに当科で経験したウイルソン病症例のうち臨床的に問題と考えられる症例を提示する。[症例1]50歳女性、32歳時に肝機能障害を指摘され、42歳時より肝臓専門医にかかるも非アルコール性脂肪性肝疾患として治療されていた。50歳時に歩行困難等の神経症状が出現し、当院でウイルソン病と診断した。[症例2]42歳男性、20歳より人格障害が出現、30歳時より統合失調症と診断され加療、肝臓専門医の診察も受けていた。41歳時に肝障害の精査にて当院でウイルソン病と診断した。[症例3]70歳女性、25歳時に神経症状にてウイルソン病と診断された。D-ペニシラミンにて加療されていたが、58歳時に認知症と診断、これに伴う転院後極少量のD-ペニシラミンしか処方されていなかった。69歳より怠薬し70歳時に黄疸のため当院受診したが、肝不全にて死亡した。[症例4]9歳時にウイルソン病と診断され内服していたが、37歳時より怠薬、再三の本人と家族への連絡により再来し、治療を再開し良好な経過をたどっている。【考案ならびに結語】ウイルソン病は数少ない治療可能な遺伝性疾患であるが、医師の認識不足と経験不足による不適切な診療、ならびに患者の治療継続の必要性に対する理解の甘さなどの問題がある。医師の本疾患に対する認識を高め、患者にも治療の継続の必要性を充分に教育することが重要である。また、肝移植を受けない本疾患患者は生涯内服治療が必要である。本疾患が特定疾患治療研究事業対象疾患となることを強く望む。 |
索引用語 |
ウイルソン病, 診断 |