抄録 |
【目的】内視鏡的粘膜治癒は良好な長期予後との関連が証明されており,日常臨床における重要な治療目標である.CDAIやCRP値以外に内視鏡的活動性をチェックすることはとても重要であるが,内視鏡は侵襲的検査で繰り返し行うのは困難である.一方,便中カルプロテクチンは炎症性腸疾患(IBD)の内視鏡的活動性とよく相関することが知られており,内視鏡に代わる非侵襲的マーカーと期待されている.当院のクローン病患者における便中カルプロテクチンと内視鏡的活動性との相関性を調べ,実臨床でIBDの活動性評価のマーカーとしての有用性を検討した.【方法】当院外来通院中のクローン病患者のうち,診断や治療効果判定の目的で内視鏡検査を施行予定の患者を対象とした.内視鏡検査を行うタイミングでさじ1杯の便を提出してもらい,当院で凍結保存し,検査会社に外注し便中カルプロテクチン値を測定した(測定キットはPhica? Calprotectin ELISA Kit).内視鏡的活動性はSES-CD(Simple Endoscopic Index for Crohn’s disease)で定量化し,内視鏡的活動性と便中カルプロテクチン値との相関性について統計学的に解析をおこなった.小腸精査には積極的にカプセル内視鏡検査を使用した.【結果】2012年9月から2013年3月までの期間に,内視鏡検査含めた消化管精査を行ったクローン病患者46例を対象とした.男性38例,女性8例,小腸型10例,小腸大腸型27例,大腸型9例であった.使用した測定キットでは,便中カルプロテクチン≧625μg/gの場合は,≧625と結果表記され実数は不明なため,変量間の相関に関する解析では≧625群9例は対象外とした.<625群37例の便中カルプロテクチン値(中央値)は124.7(7.3~594)μg/gで,SES-CDと便カルプロテクチン値は有意な相関がみられた(r=0.5812,p=0.0002).【結論】当院の外来通院中のクローン病患者において,便中カルプロテクチン値は内視鏡的活動性の指標であるSES-CDと,有意な相関性がみられ,治療中のモニタリングに非常に有用である. |