セッション情報 口演

門脈圧亢進症2

タイトル O-056:

非代償性肝硬変に対するTolvaptanの使用経験

演者 永井 一正(手稲渓仁会病院消化器病センター)
共同演者 辻 邦彦(手稲渓仁会病院消化器病センター), 山崎 大(手稲渓仁会病院消化器病センター), 松居 剛志(手稲渓仁会病院消化器病センター), 姜 貞憲(手稲渓仁会病院消化器病センター), 桜井 康雄(手稲渓仁会病院消化器病センター), 児玉 芳尚(手稲渓仁会病院消化器病センター), 真口 宏介(手稲渓仁会病院消化器病センター)
抄録 【背景】非代償性肝硬変の合併症である肝性浮腫は,胸水による呼吸苦や腹水による腹満感などでQOLが著しく低下することから,重要な問題である.今回,肝性浮腫に対する新たな治療薬であるバゾプレッシンV2受容体拮抗薬のTolvaptanの使用経験について報告する.【方法】対象は肝性浮腫を伴う非代償性肝硬変に対してTolvaptanを投与した8例.年齢は56~82歳(中央値78歳),男女比は3:5,肝硬変の成因はHCV起因3例,アルコール性3例,自己免疫性肝炎2例で,Child-Pugh分類はBが3例でCが4例,P.Sは,1;2例,2;2例,3;2例,4;2例であった.肝癌合併は認めなかった.【検討項目】1.前治療,2.投与量/期間,3.自覚症状改善の有無,4.体重の推移,5.尿量の推移,6.血清Na値,7.eGFR,8.有害事象について検討した.【結果】1.Tolvaptan開始前のFurosemide使用量は中央値:80mg(20~400),Spironolactone使用量は中央値:100mg(0~300).2.Tolvaptanは7.5mg/日を投与,6例が連日投与で2例は隔日投与.投与期間は中央値:5日間(3~9).3.8例中6例(75%)で自覚症状の改善を認めた.4.投与3日後の体重の減少量は中央値:-0.6kg(-3.4~+0.7),投与7日後は同-4.3kg(-12.7~-0.2)であった.5.投与4日後の尿量は中央値:1150ml(400~3600).6.投与前血清Na値は中央値:130 mEq/l(118~143),投与4日後のNa値は同132 mEq/l(124~146)で,投与前から同6 mEq/l(-5~9)の変化を認めた.また,1例で投与4日後にNa 146 mEq/lと高Na血症を認めた.7.投与前eGFRは中央値:50(17~134),投与4日後のeGFRは同48(17~182)とeGFRの悪化は認めなかった.8.高Na血症と下痢が1例みられたのみで,重篤な有害事象は認めなかった.【まとめ】従来の利尿剤でコントロールが困難な肝性浮腫に対して,Tolvaptanは安全で有用であり,新たな治療選択肢と思われた.
索引用語