セッション情報 口演

肝臓 基礎

タイトル O-063:

わが国におけるA型劇症肝炎の実態と動向

演者 中山 伸朗(埼玉医科大学消化器内科・肝臓内科)
共同演者 桶谷 真(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 坪内 博仁(鹿児島市立病院), 持田 智(埼玉医科大学消化器内科・肝臓内科)
抄録 【目的】厚労省研究班による急性肝不全の全国調査では,従来は内科的治療で予後が良好であったA型劇症肝炎(急性肝不全・昏睡型)の救命率が,2010年~11年発症の肝移植非実施例では7.1%と低率になっていた.この予後悪化に寄与する要因を検討した.【方法】全国調査に登録された1998~2011発症のA型劇症肝炎計67例中,移植非実施の64例を対象として,救命率と背景因子の関連を解析した.【成績】(1)1998~2003年(前期)に発症した42例と2004年以降(後期)に発症した22例に区分すると,救命率は前期が78.6%,後期が59.1%で,予後は不良になっていた.男女比は前期が25:17に対して,後期は19:3で男性が高率であった(p<0.05).年齢(平均±標準偏差)は前期48.3±12.9歳,後期56.4±10.5歳で(p<0.05),高齢化が見られた.基礎疾患を有する頻度は22.0%から57.1%に上昇していた(p<0.05).基礎疾患を高血圧,糖尿病,脂質異常症,固形癌,心疾患,精神疾患に区分すると,糖尿病の合併率にのみ変化が見られ,前期9.5%から後期22.7%まで高率化した.(2)全64症例を救命46例,死亡18例に区分すると,男女比は生存群が27:19に対して,死亡群は17:1で,有意に男性が高率であった(p<0.01).また,死亡群は年齢がより高齢で(p<0.01),基礎疾患の併発率も高率で(p<0.05),特に糖尿病は生存群(8.7%)に比して死亡群(27.8%)で多く認められた(p<0.05).また,基礎疾患の併発率は男性(39.5%)に比して女性(20.0%)は低率であった.【結語】最近のA型劇症肝炎は高齢化しており,特に男性で糖尿病などの基礎疾患を併発している頻度が高いことが,内科的治療による救命率が低下した要因と考えられた.
索引用語