セッション情報 口演

H.pylori感染症1

タイトル O-081:

胃癌高死亡率地域における若年者向けピロリ菌検診・除菌の実際

演者 珍田 大輔(弘前大学消化器血液内科学講座)
共同演者 下山 克(弘前大学消化器血液内科学講座), 福田 眞作(弘前大学消化器血液内科学講座)
抄録 【目的】青森県の日本海側は胃癌死亡率が高い地域で,H. pylori感染率も全国的には高い.同地域における胃癌を含めたH. pylori感染に関連する疾患を減少させ,さらに若年世代への感染の伝播を妨げるため,平成24年よりつがる市,鶴田町ではピロリ菌検診に取り組んでいる.今回,この検診の初年度の結果について報告する.【方法】20~40歳の一般住民に対し,便中ピロリ菌抗原検査(テストメイトEIA)用の採便キットを配布し,採便後検査センターに直接郵送させた.検査結果は市・町を通して通知した.感染者はつがる市立成人病センターまたは鶴田町立病院を受診し,採血と内視鏡検査を受けた上でランサップ400 7日分を自治体より支給された.除菌薬内服者は,便サンプルを再度検査センターに郵送した.除菌の成否は自治体を通じて通知され,不成功者は2次除菌薬を支給された.血清ペプシノーゲン(PG)濃度を測定し,内視鏡検査の結果とあわせて胃癌のリスクについて説明した.【成績】平成25年3月末までに1147名が便を提出し,190名(16.6%)が陽性であった.感染率は20代が14.1%,30代では18.2%であった.便中抗原陽性者190名中,132名が内視鏡検査と採血を受けた.39名がPG I,II濃度より萎縮性胃炎陽性と判断された.内視鏡所見では十二指腸潰瘍瘢痕が5名,胃潰瘍瘢痕が3名あり,腸上皮化生も2名で認められた.9名で鳥肌胃炎が認められた.1次除菌の成功率は60.9%と低かったが,2次除菌は1名を除いて成功した.【結論】40歳未満であってもPG法が陽性である場合が少なくなく,除菌にあたってはH. pylori感染消失後も胃癌リスクがあり,胃がん検診が必要であることを説明する必要がある.鳥肌胃炎については,内視鏡による経過観察を勧めている.H. pylori除菌の保険適用拡大後は,最初の便中抗原を全額自治体が負担し,陽性者への内視鏡検査,除菌治療は保険診療で行い,本院負担分を自治体が負担する形で検診を継続している.
索引用語