セッション情報 口演

H.pylori感染症2

タイトル O-084:

日本人の胃酸分泌能の変化について―1990年代~2010年代の検討―

演者 飯島 克則(東北大学消化器内科)
共同演者 小池 智幸(東北大学消化器内科), 関根 仁(仙台市立病院消化器内科), 大原 秀一(東北労災病院消化器内科), 阿部 靖彦(山形大学第二内科), 下瀬川 徹(東北大学消化器内科)
抄録 Kinoshitaらは,日本人の胃酸分泌能は1970年代に比べ,1990年代でH. pylori感染の有無にかかわらず有意に増加していると報告している(Gut 1997).胃酸分泌は,逆流性食道炎などの上部消化管酸関連疾患の重要な規定因子であり,胃酸分泌の年代別推移を検討することは,今後の日本人における上部消化管の疾患構成を考えるうえで重要である.我々は,1995年以来,内視鏡検査と同時に胃酸分泌能を評価する簡便なEGT(endoscopic gastrin test)を考案し(AJG 1999),多数例での胃酸分泌を検討してきた.今回,健常男性での胃酸分泌の年代別推移について検討した.【方法】東北大学病院消化器内科で,スクリーニング目的で内視鏡検査を受け,胃炎以外に器質的異常を認めなかった者,および,健常ボランティア,計350人(平均年齢54±19歳)を対象とした.胃酸分泌能はEGT法を用いて測定した.検査施行時の年代別にA期(95例):1995~1999年,B期(46例):2000~2004年,C期(120例):2005~2009年,D期(88例):2010~2012年,の4群に分類した.H. pylori感染に関しては,血清抗体法,組織鏡検法,RUTを用いて行った.【結果】各時期での対象者の平均年齢は,A期:49±16歳,B期:58±18歳,C期:65±14歳,D期:41±21歳であり,H. pylori感染率は,A期:62%,B期:69%,C期:65%,D期:36%といずれも4群間で有意差を認めている.各時期での単純な胃酸分泌の比較では,A期:2.5±1.9 mEq/10min,B期:2.4±2.3,C期:2.9±2.1,D期:3.9±1.9であった.【結論】当科では,1995年以降の健常者の胃酸分泌能のデータが多数蓄積されており,1990~2010年代の胃酸分泌の推移を評価することが可能となっている.胃酸分泌のレベルに大きな影響を及ぼす年齢,H. pylori感染の影響を調整し,最近の症例も追加し,最終的に日本人の最近の胃酸分泌レベルの推移について報告する.
索引用語