セッション情報 口演

H.pylori感染症2

タイトル O-086:

胃がん予防を目的とした中学生ピロリ菌検診と除菌治療

演者 奥田 真珠美(兵庫医科大学地域総合医療学)
共同演者 菊地 正悟(愛知医科大学公衆衛生学), 間部 克裕(北海道大学病院光学医療診療部), 加藤 元嗣(北海道大学病院光学医療診療部), 福田 能啓(兵庫医科大学地域総合医療学)
抄録 【目的】Helicobacter pyloriは乳幼児期に感染したのち持続感染し,胃がんの原因となる.感染者では20倍以上の胃がんリスクが報告され,胃炎の程度が軽い若年者で除菌による胃がん予防効果が期待される.我々は中学生のピロリ菌検診と希望者に除菌治療を行なった.【対象と方法】対象は2012年10月に篠山市内の中学校に在籍する1,225名.保護者にアンケートを配布し,“ピロリ菌検診”希望の有無,希望する場合,尿and/or血液検査を選択する回答を得た.尿中抗体はウリネリザH.ピロリ抗体(ELISA)と比較検討のためラピランH.ピロリスティック(イムノクロマト)も測定した.血清抗体はEプレート‘栄研’H.ピロリ抗体II(ELISA)で測定した.血清ペプシノゲン(PG)(ルミパルスプレスト ペプシノゲンI,II)の測定も行ない,PG I 70 ng/ml以下かつPG I/II比が3.0以下をPG法陽性とした.【結果】337名が検診に参加.抗体陽性率はウリネリザ3.1%(10/318),Eプレート5.8%(12/206)であった.いずれかの抗体陽性は4.2%(14/337)であった.PG法のみ陽性は8.3%(17/206),PG法かつ血清抗体陽性は1%(2/206)であった.抗体陽性者では希望者に尿素呼気試験を行い両者が陽性の4名に除菌治療を行った.うち2名は上部内視鏡検査を施行し,1名で結節性胃炎と軽度の萎縮を認めた.ウリネリザとラピランの比較ではウリネリザを基準とするとラピランは感度80%,特異度99%であった.【考察】中学生における感染率は低く,胃がん予防のための検診と除菌治療は実行可能であると考えられる.しかし,抗体測定法など検診方法はさらに検討が必要である.PG法陽性率が高く,中学生では成人の基準が適用できない可能性がある.【結語】篠山市における中学生のH. pylori抗体陽性率は4.2%であった.軽度の萎縮を認める症例もあり,胃癌予防を目的とした場合,中学生もしくはより若年での除菌を行う必要があることが示唆された.
索引用語