セッション情報 口演

H.pylori感染症2

タイトル O-088:

早期胃癌ESD患者に対するピロリ除菌の介入試験による分子マーカーの推移

演者 渡 二郎(兵庫医科大学内科学上部消化管科)
共同演者 河中 真紀(兵庫医科大学内科学上部消化管科), 山崎 尊久(兵庫医科大学内科学上部消化管科), 近藤 隆(兵庫医科大学内科学上部消化管科), 豊島 史彦(兵庫医科大学内科学上部消化管科), 櫻井 淳(兵庫医科大学内科学上部消化管科), 池原 久朝(兵庫医科大学内科学上部消化管科), 富田 寿彦(兵庫医科大学内科学上部消化管科), 大島 忠之(兵庫医科大学内科学上部消化管科), 福井 広一(兵庫医科大学内科学上部消化管科), 三輪 洋人(兵庫医科大学内科学上部消化管科)
抄録 【背景と目的】腸上皮化生(IM)は分化型胃癌の前癌病変とされ,さまざまな分子異常を認める.早期胃癌のESD後にピロリ菌(Hp)除菌治療を行うことで異時性胃癌の発生が抑制されることが報告された(Fukase et al. Lancet 2008).しかし,最近の後ろ向き研究では異なる結果が報告されている.そこで,除菌治療による異時性胃癌の発癌抑制機序を明らかにすることを目的に介入試験を行いIMでの分子異常の推移を検討した.【対象と方法】ESDを施行した分化型胃癌71例(m癌61,sm癌10),胃腺腫6例を対象とした.Hp感染は血清IgG抗体とGiemsa染色にて判定した.ESD後,胃内3点定点生検を施行し,Laser capture microdissection法にてIMから選択的にDNAを抽出した.分子異常は,改訂Bethesda基準によるマイクロサテライト不安定性(MSI)とmethylation specific PCR法にてhMLH1E-cadherinp16APC遺伝子のプロモーター領域のメチル化異常を解析した.さらに,介入試験1年後(除菌群9例,非除菌群11例)の分子異常の推移について検討した.【結果】1)ESD施行例でのHp陰性例は25例(32.5%)存在し,自然排菌12例(48%),除菌後13例(52%)であった.2)MSIは43.3%に認め,hMLH1E-cadherinp16APC遺伝子のメチル化は,それぞれ16.2%,10.3%,37.0%,49.3%であった.また,Hp陽性例は陰性例に比べhMLH1APCでのメチル化が有意に高頻度であった(p=0.005,p<0.01)が,他の分子マーカーには差を認めなかった.3)除菌介入1年後の分子マーカーの推移は除菌群,非除菌群ともに不変のものが多く,改善や増悪の頻度に差を認めなかった.【結論】Hpの有無にかかわらずIMには高頻度に分子異常が生じており,除菌介入による分子異常の改善に乏しかった.今後,長期間にわたる多数例での検証が必要である.
索引用語