セッション情報 口演

臨床病態

タイトル O-090:

抗血栓薬による血栓性および出血性偶発症の経験状況

演者 鷹取 元(金沢大学消化器内科)
共同演者 加賀谷 尚史(金沢大学消化器内科), 金子 周一(金沢大学消化器内科)
抄録 【背景】抗血栓薬の取り扱いについて新しいガイドラインが示された.抗血栓薬の休薬による偶発症に注意が払われているが,一方で服薬したままでの生検等に対する懸念も存在する.今回我々は抗血栓薬による偶発症の経験と新ガイドラインの受け入れ状況について,消化器内視鏡専門医に調査し,検討した.【方法】35施設(病院22,診療所13)の56名(病院43名,診療所13名)の専門医に,アンケート調査を行った(2013年3月および9月).解析はカイ2乗検定を用いた.【結果1】内視鏡のための抗血栓薬の休薬による偶発症は,29%もの医師が経験していた.偶発症は脳血管障害が最多で86%,心血管イベントと下肢動脈閉塞が7%であった.症例の基礎疾患は脳血管疾患が63%,心房細動・不整脈が31%,心筋梗塞・狭心症が6%であった.休薬した薬剤はアスピリン+αの2剤休薬が35%を占め,ワーファリン単剤が22%,アスピリンとチクロピジン単剤が14%ずつであった.【結果2】生検による出血は20%の医師が経験していた.ほとんどが胃の生検であった.休薬せずに生検した出血は11%の医師が経験しており,アスピリンとチクロピジンが多かった.抗血栓薬の影響と考える治療による出血は32%の医師が経験し,大腸EMR,PEG,胃ESDの順で多く,薬剤ではクロピドグレルが多かった.ほとんどの例は休薬再開後の出血であった.【結果3】新ガイドラインについては2013年3月の時点で96%の医師に認知されていた.施設としての導入は3月の時点では病院27%,診療所0%であり,診療所で有意に低かった(p<0.05).9月では病院55%,診療所23%と3月と比べ普及していた(p<0.05).【考察】抗血栓薬の中止による偶発症は29%の専門医が,生検による出血は20%の専門医が経験していた.新ガイドライン導入は,診療所において慎重な姿勢がみられるが,徐々に普及している.
索引用語