セッション情報 口演

UC(潰瘍性大腸炎)基礎

タイトル O-093:

樹状細胞のTGF-βシグナルによる腸内細菌叢の恒常性維持

演者 井原 聡三郎(東京大学消化器内科)
共同演者 平田 喜裕(東京大学消化器内科), 小池 和彦(東京大学消化器内科), 伊地知 秀明(東京大学消化器内科), 木下 裕人(東京大学消化器内科), 鈴木 伸三(東京大学消化器内科), 中川 勇人(東京大学消化器内科), 芹澤 多佳子(東京大学消化器内科)
抄録 【目的】炎症性腸疾患の病態解明において宿主免疫細胞と腸内細菌叢の相互作用の検討は重要な課題である.樹状細胞は腸内細菌を感知し粘膜免疫を司っているが,その制御機構は十分には分かっていない.本研究では樹状細胞特異的TGF-β受容体欠損マウスを用いて腸内細菌叢の変化と腸炎への関与を検討した.【方法】野生型(WT),CD11c-Cre TGFBRII fl/+(HT),CD11c-Cre TGFBRII fl/fl(KO)マウスを用いた.1.WT,HT,KOマウスの非刺激時,2.WT,HTマウスに2.0%DSSを投与する群(DSS群),3.WT,HTマウスに2.0%DSSと抗生剤を投与する群(DSS+Abx群)を設定し,死亡率・体重変化・大腸病理を比較した.各マウスの便中DNAを採取し16S rRNA universal primerとEnterobacteriaceae specific primerを用いて定量PCRを施行し,便中細菌量を比較した.【結果】非刺激時ではKOマウスでのみ体重が減少し14週以内に全て死亡した.KOマウスでのみ大腸の短縮・組織学的炎症スコアの高値を呈した.DSS群ではWTマウスに比してHTマウスで体重減少・大腸の短縮・組織学的炎症スコアの高値を呈した.DSS+Abx群ではWT,HTマウスともに体重変化・大腸炎は軽度で,差はみられなかった.便中細菌量は,非刺激時ではKOマウスでのみEnterobacteriaceaeが増加した.DSS群ではWTマウスに比してHTマウスでEnterobacteriaceaeが増加した.DSS+Abx群では総細菌,Enterobacteriaceaeともに菌量に差はみられなかった.【結論】樹状細胞のTGF-βシグナルの欠損で腸炎の悪化がみられた.腸炎の悪化した群においてEnterobacteriaceaeの増加がみられた.樹状細胞のTGF-βシグナルが腸内細菌叢の恒常性維持と腸炎抑制に関与している可能性が示唆された.
索引用語