セッション情報 口演

UC(潰瘍性大腸炎)基礎

タイトル O-095:

腸管上皮細胞における小胞体ストレス-オートファジー経路の検討

演者 下平 陽介(東北大学消化器病態学分野)
共同演者 高橋 成一(東北大学地域医療連携消化器講座), 下瀬川 徹(東北大学消化器病態学分野)
抄録 【背景・目的】近年,変性蛋白の処理など蛋白の恒常性維持に関わる小胞体ストレス応答(UPR)とリソソームによるオルガネラや細胞質成分の分解機構であるautophagyが,炎症性腸疾患(IBD)の病態と関わることが示されてきている.そこで我々は,腸管上皮細胞においてUPRとautophagyが機能的に関連し,その異常がIBDの病態と関わっている可能性を考えた.今回,大腸癌培養細胞を用いて小胞体ストレス(ER stress)とautophagyの関連を検討した.【方法】3種の細胞株(HT29,SW480,Caco-2)と2種のER stress誘導剤(tunicamycin,thapsigargin)を用いた.Autophagyの確認はLC3-II蛋白のWestern blotting,GFP-LC3ドットの観察,電子顕微鏡による観察で行った.siRNAあるいはshRNAにより遺伝子をknockdownした.ER stress-autophagy経路に関わる分子の遺伝子発現解析アレイによる網羅的検討も行った.【結果】ER stress誘導剤で,UPRが亢進することをPCRおよびWestern blottingで経時的に確認した.ER stress誘導剤の濃度・時間依存的なautophagyの亢進が示された.UPRのcanonicalな3経路(PERK,IRE1α,ATF6)の検討で,IRE1αのknockdownでER stressによるautophagyの亢進が抑制され,IRE1αがautophagyの亢進に関わることが示された.さらにアレイの結果を元に,UPR関連遺伝子のCHOPがER stressによるautophagyの亢進に関わることがknockdown実験にて示された.また,CHOPはIRE1αの発現を制御していた.【結論】大腸癌培養細胞においてER stress-autophagy経路が示され,関わる関連分子が示されることで本経路の一部が明らかとなった.生体の腸管上皮細胞においてもER stressとautophagyに同様の関連が存在することが予想される.ホメオスターシスを制御し細胞生存に関わるこれらの重要な細胞内機構を結ぶ本経路の異常が,腸管局所においてIBDの病態形成に関与している可能性もあり,ER stress-autophagy経路とIBDの関わりにつき今後のさらなる解明が必要であると考えられた.
索引用語