セッション情報 口演

UC(潰瘍性大腸炎)基礎

タイトル O-097:

炎症性腸疾患におけるストレス不適応に関する検討

演者 黒木 司(佐賀大学医学部内科)
共同演者 岩切 龍一(佐賀大学医学部内科), 藤本 一眞(佐賀大学医学部内科)
抄録 [目的]炎症性腸疾患はストレス関連疾患の一つであり,ストレスが腸炎増悪の誘因のひとつと考えられている.ストレス対処機構として,神経・内分泌・免疫系を介したホメオスタシス維持機構が存在する.今回は炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎,クローン病)において,視床下部-下垂体-副腎系(HPA-axis)を含む神経・内分泌・免疫系の障害が存在するのか,それに関連して患者はストレス対処能力が劣っているのかを検討した.[方法]対象は潰瘍性大腸炎患者23名,クローン病患者16名を対象とした.さらに健常人(12名)を正常対象にした.アンケート調査では,一般性セルフエフィカシー(GSES:行動に対する自信の程度を示す指標)と,コヒアレンス感(SOC:ストレス対処能力を示す指標),自覚ストレス調査(JPSS)を行った.ストレスや炎症の指標となるコルチゾール,ACTH,TNF-α,IL-6,セロトニン,カテコールアミン,ドーパミンを測定した.[結果]アンケート結果では,潰瘍性大腸炎,クローン病ともにセルフエフィカシーが患者群で有意に低下していた.コルチゾール,アドレナリンは有意ではないものの両患者群が健常群より高い傾向にあり,IL-6,ノルアドレナリンが健常群より有意に高かった.健常群においてセルフエフィカシーが低い者は,ドーパミンが有意に高く,コヒアレンス感が低い者は,ACTHが有意に高かった.潰瘍性大腸炎患者とクローン病患者ではこのような差はみられなかった.[結論]アンケートとストレス指標から,患者はストレス対処に問題が認められた.神経・内分泌・免疫系が過剰に活性化され,HPA-axisの機能障害を起こしている可能性が示唆された.
索引用語