セッション情報 口演

大腸癌 化学療法2

タイトル O-117:

大腸癌治療と成人病予防

演者 栗山 翔(日本医科大学消化器外科)
共同演者 山田 岳史(日本医科大学消化器外科), 内田 英二(日本医科大学消化器外科), 菅 隼人(日本医科大学消化器外科), 小泉 岐博(日本医科大学消化器外科), 進士 誠一(日本医科大学消化器外科)
抄録 【背景】がんが治癒する時代となったが,患者の高齢化が進み,生活習慣病の罹患率が高まるという新たな問題が生じた.我々はこれまでに消化器癌手術後の栄養管理の重要性について報告し,体重管理のみならず骨格筋量を維持することで,術後の補助化学療法の完遂率が高まり,再発後の化学療法のTTFが改善するため,外来でのNST活動が重要であることを報告してきた.しかし治癒切除を行った大腸癌患者では術後に骨格筋量が低下する症例は少ない反面,体重が増加すると共に高コレステロール血症となる症例を多く経験したため,大腸癌手術前後のコレステロール値を比較し,大腸癌術後コレステロール値上昇の危険因子を探索した.【方法】2009年1月から2012年7月までに結腸癌に対し切除術を行った289例を対象として,後方視的に検討を行った.血清コレステロール値200 mg/dL以上をコレステロール高値群とし,術前(1ヶ月以内)と術後1年後(11ヶ月後-13ヶ月後)の有病率を比較した.また術後コレステロール高値となる危険因子を探索した.【結果】コレステロール高値症例は37.3%から49.3%と術後に有意に増加した.(p=0.016).術前コレステロール≧200,女性,75歳以下非高齢者がリスク因子であり,術前の骨格筋減少はリスク因子とならなかった.【考察】がんが治る時代になり,がん患者の併存疾患の治療や新たな疾病罹患の予防が重要になってきた.高脂血症は心血管疾患のリスク因子であるだけでなく,大腸癌の発癌リスクでもあるため異時性多発癌の発生も懸念される.我々はこれまで術後の排便障害や栄養不良にばかりに注意を払ってきたが,大腸癌患者では生活習慣病の治療,予防を視野にいれ,栄養不良のみに限定せず,過栄養にも対応できる幅広いNST活動が必要である.
索引用語