セッション情報 口演

SB,CE,その他

タイトル O-119:

小腸アニサキス症8例の臨床的検討

演者 叶多 寿史(池上総合病院外科)
共同演者 鈴木 理之(池上総合病院外科), 深澤 麻希(池上総合病院外科), 葉梨 智子(池上総合病院外科), 石川 健二(池上総合病院外科), 町村 貴郎(池上総合病院外科), 貞廣 荘太郎(東海大学付属病院消化器外科), 安田 聖栄(東海大学付属病院消化器外科)
抄録 【目的】小腸アニサキス症は,しばしば激烈な症状を呈し,急性腹症と診断され緊急手術に至ることもある疾患である.一方で,多くの症例は保存的に改善を認め,手術適応となることは稀であることから,適切な治療方針選択の為に,この疾患の臨床的特徴を知ることが重要である.今回我々の施設で診断された小腸アニサキス症例に関して臨床的検討を行い,その特徴につき考察した.【対象】2009年7月から2013年9月までに当院で診断された小腸アニサキス症8例.【結果】男女比:6:2 平均年齢:52.4歳 生鮮魚介類摂取歴:有り7例 不明1例 平均潜伏期間:2.1日 平均有症状期間:6.6日 平均在院日数:9.3日主訴:腹痛4例 腹部膨満1例 嘔気,嘔吐1例 下痢1例 発熱1例 腹膜刺激症状:有り2例 無し6例 腹水:有り7例 無し1例 小腸拡張像:全例あり 小腸限局的壁肥厚像:有り7例 無し1例 白血球数上昇:有り6例 無し2例 CRP上昇:全例あり 抗アニサキスIgG+IgA抗体:全例陽性 治療:経過観察5例 胃管or イレウス管挿入3例.【考察】生鮮魚介類摂取歴の聴取はこの疾患を疑う上で必須であり,多くの症例で数日以内に魚介の刺身を摂取していた.症状は腹痛の他,イレウス症状が主体となり,患者の訴えは非常に強いことが多いが,腹膜刺激症状を呈することは少ない.画像上,腹水が貯留している事は多く,小腸拡張像を認めることから,絞扼性イレウスとの鑑別が必要になるが,多くの症例で小腸壁の限局的な肥厚像を認め,その口側の小腸が拡張していることが特徴である.炎症反応の上昇は認めることが多いが,それほど高値となることは少ない.全例で入院初期に検査した,抗アニサキスIgG+IgA抗体は陽性となったが,本来であれば,期間を置いてのペア血清をとることが望ましいとされている.治療は保存的治療が主体であり,1週間以内に症状が改善することが多い.【結語】小腸アニサキス症の臨床像は特徴的であり,この疾患を念頭に置くことにより,診断は容易と思われる.
索引用語