セッション情報 口演

膵癌2

タイトル O-128:

切除不能進行膵癌に対する化学療法の成果と課題

演者 庄 雅之(奈良県立医科大学消化器・総合外科)
共同演者 赤堀 宇広(奈良県立医科大学消化器・総合外科), 木下 正一(奈良県立医科大学消化器・総合外科), 長井 美奈子(奈良県立医科大学消化器・総合外科), 田中 利洋(奈良県立医科大学放射線科), 西尾福 英之(奈良県立医科大学放射線科), 玉本 哲郎(奈良県立医科大学放射線治療科), 長谷川 正俊(奈良県立医科大学放射線治療科), 吉川 公彦(奈良県立医科大学放射線科), 中島 祥介(奈良県立医科大学消化器・総合外科)
抄録 【目的】切除不能進行膵癌に対する治療成績を解析し,成果と課題を検討した.【方法】自施設治療成績及び国内外の臨床試験結果に基づき,現在の当科における切除不能膵癌に対する治療方針は,(1)局所進行膵癌(LAPC)に対してはGEM/S-1併用(GS)療法を第一選択とし,腫瘍縮小が得られ,切除可能となった場合には化学放射線治療後に根治切除を施行,(2)転移性膵癌(MPC)にはGEM/エルロチニブ(GE)療法を第一選択としている.今回,2007年10月-2012年7月までに当科にて治療開始した切除不能膵癌116例を対象として,全治療成績を解析した.【結果】切除不能膵癌全例の1年生存率51.6%,生存期間中央値(MST)12.2ヵ月であった.LAPC43例の予後は,MPC73例に比し有意に良好であった(MST:21.7ヵ月vs. 9.2ヵ月,P<0.0001).(1)LAPC10例(23%)に対して,GS療法により顕著な腫瘍縮小が得られ,化学放射線治療を行った後に,根治切除を行った(PD2,DP2,DP-CAR6例).リンパ節転移は1例(10%)のみで,全例R0であった.組織学的効果は,Evans分類IIa1,IIb5,III4例であった.現在7例生存,5例無再発である(1/2/3年生存率100/88/60%,15-63ヵ月).(2)エルロチニブを51例に使用した.1年生存率49.3%,MST10.5ヵ月であった.間質性肺炎は2例(3.9%)に認めたがステロイド加療にて軽快した.特に肝転移症例においてエルロチニブ使用例は,非使用例に比し予後改善の傾向を認めた(1年生存率43.6% vs. 28.0%).しかし,現行治療では予後改善は不十分であり,治療限界があると思われた.【結論】切除不能膵癌において,病態に合わせた化学療法及び集学的治療により,予後改善の可能性が示唆された.局所進行膵癌においては根治となる可能性もあり,集学的治療の一環として切除の意義は大きいと思われた.一方,転移性膵癌の予後改善効果は今なお不十分であり,新規治療の開発が必須である.
索引用語