セッション情報 口演

膵癌 術後化学療法

タイトル O-137:

膵癌の肝転移予防を目指した術直後より開始する門注化学療法

演者 北郷 実(慶應義塾大学一般消化器外科)
共同演者 板野 理(慶應義塾大学一般消化器外科), 篠田 昌宏(慶應義塾大学一般消化器外科), 阿部 雄太(慶應義塾大学一般消化器外科), 日比 泰造(慶應義塾大学一般消化器外科), 八木 洋(慶應義塾大学一般消化器外科), 相浦 浩一(川崎市立川崎病院内視鏡室), 北川 雄光(慶應義塾大学一般消化器外科)
抄録 (目的)膵癌の治療成績は未だ不十分であり,術後補助療法が標準治療となっている.当教室では術直後の周術期にも補助療法として門注化学療法(PI)を行ってきたのでその成績を報告する.(対象/方法)対象は1995年以降切除された膵癌180症例.プロトコールは2001年までの初期PI(PI2W)は術直後より5-FU 250mg/dayを2週間門脈内持続注入した.2001年以降の後期PI(PI4W)は術直後より5-FU 250mg/dayとHeparin 2000U/dayの4週間門脈内持続注入とMMC 4mg/day,CDDP 10mg/dayを併用投与(x1/w,x4w)した.(結果)PI2Wは23例,PI4Wは80例,PIを施行しなかった対照(Ct)は77例.PI2W/PI4W/Ctの性別は男性15/53/47,女性8/27/30,平均年齢はそれぞれ67/68/67歳.PI2W/PI4W/Ctの術式は(Pp)PD/DP/TPに大別すると14/5/4,45/31/4,50/25/2.術後Stage(JPS)は,Stage0/1/2/3/4a/4bがそれぞれ0/1/2/10/5/5,2/4/6/31/32/5,0/3/4/34/25/11.術後初回再発部位として肝転移はそれぞれ47.8%/12.5%/37.7%,肺転移はそれぞれ8.7%/13.8%/7.8%.1/3/5年術後無再発生存率はそれぞれPI2W 43.5%/30.4%/26.1%,PI4W 72.4%/44.7%/25.8%,Ct 55.8%/31.2%/17.7%であった.1/3/5年全生存率はそれぞれPI2W 52.2%/34.8%/26.1%,PI4W 91.3%/62.3%/47.7%,Ct 74.9%/48.3%/21.5%.PI2W群は肝転移抑制効果が乏しく治療成績も対照群と差を認めなかったが,PI4WはPI2Wより肝転移を抑制し治療成績も他の2群より良好であった.しかし,術後長期でも肺転移を含めた再発を認めPI後の追加補助療法を検討する必要がある.2010年より多施設共同研究として膵癌切除症例にPI4W+GEMを用いた術後補助化学療法の第II相試験を開始して現在登録を終了して観察中である.(結語)膵癌に対する術後補助療法としてPI4Wは肝転移を抑制し,全生存期間の延長をもたらすことが示唆された.しかし,長期生存例でも再発する症例を経験するのでPI4Wに全身補助化学療法を組み合わせてさらなる予後改善を目指す必要がある.
索引用語