セッション情報 口演

腫瘍

タイトル O-149:

消化器癌における上皮間葉転換分子であるHMGA2の影響について

演者 森下 朝洋(香川大学消化器・神経内科学)
共同演者 坂本 鉄平(香川大学消化器・神経内科学), 藤田 浩二(香川大学消化器・神経内科学), 前田 瑛美子(香川大学消化器・神経内科学), 野村 貴子(香川大学消化器・神経内科学), 谷 丈二(香川大学消化器・神経内科学), 三好 久昭(香川大学消化器・神経内科学), 米山 弘人(香川大学消化器・神経内科学), 樋本 尚志(香川大学総合診療部), 正木 勉(香川大学消化器・神経内科学)
抄録 【目的】進行性の消化器癌に対する治療は,依然として困難であり,浸潤,転移のメカニズムを踏まえた新たな分子標的薬の開発が急務である.今回,我々は上皮間葉転換に関与する新しい分子であるHigh Mobility Group A2(HMGA2)の消化器癌の浸潤,転移に対する影響について検討した.【方法】1.大腸癌細胞株を用いて,HMGA2遺伝子を過剰発現させたときに上皮間葉転換関与分子や細胞周期関連分子の発現を解析し,またinvasion assayを用いて,その浸潤能について検討した.2.ヒト大腸癌の組織を用いて,部位別,ステージ別に免疫組織染色を行い,それぞれの分子の発現を解析した.また予後についてはヒト肝細胞癌組織を用いて解析をした.【成績】1.HMGA2の過剰発現した大腸癌細胞株において,間葉系マーカーの発現の亢進,上皮系マーカーの発現の低下がみられた.また,HMGA2過剰発現大腸癌細胞株に有意に浸潤能の亢進がみられた.またHMGA2は上皮間葉転換の重要なシグナル経路であるTGFβの経路の代表的な分子TGFβ type II receptor(TGFβRII)の発現を亢進させることが示唆された.さらに細胞周期関連分子ついでは,癌抑制遺伝子であるp18INK4c,p19INK4dの発現を低下させた.2.ヒト大腸癌組織ではHMGA2は浸潤先端に一致して過剰発現がみられたが,中心部の高分化型の癌組織ではその発現がみられなかった.さらに腫瘍のステージが進むにつれ,浸潤先端部のHMGA2発現細胞の陽性率と腫瘍全体の陽性率との間に有意差がみられなくなった.一方,ヒト肝細胞癌組織におけるHMGA2の発現と患者の予後には負の相関がみられた.【結論】上皮間葉転換の新しい分子であるHMGA2が消化器癌の浸潤先端でTGFβRIIの発現の亢進を介して,癌細胞の浸潤能を変化させ,癌の浸潤,転移に密接に影響していること考えられた.またHMGA2は消化器癌の予後を予測する新たな因子であることが示唆された.
索引用語