セッション情報 口演

肝癌 基礎

タイトル O-153:

癌抑制遺伝子Klf6は血球系及び肝細胞の分化に関与する

演者 松本 伸行(聖マリアンナ医科大学消化器・肝臓内科)
共同演者 鈴木 通博(聖マリアンナ医科大学消化器・肝臓内科), 伊東 文生(聖マリアンナ医科大学消化器・肝臓内科)
抄録 【背景】近年の発生生物学の進歩により,in vitroにおいてES細胞から肝細胞へ分化を誘導することが可能となり,現在,その臨床応用が期待されている.しかし,未分化なES細胞から肝細胞にいたる分化メカニズムが十分に理解されているとは言い難い.Klf6は肝細胞癌を含む多くの癌で変異や欠失,発現低下が報告されており,癌抑制遺伝子として機能している事が示唆されている.Klf6の発現は,成体肝に比し,胎児肝で上昇が認められること,CCl4による肝障害モデルや,肝切除後の早期に発現の上昇を認める事等から,肝細胞の分化,臓器形成に深く関与している事が示唆される.【目的】癌抑制遺伝子Klf6の肝細胞の分化における役割を解析する.【方法】1)Klf6-/-マウスの表現形を検討した.2)in vitro分化誘導システムを用いてKlf6+/+およびKlf6-/- ES細胞の肝細胞系譜への分化を検討した.【成績】Klf6-/-マウスは胎生致死で,明らかな肝臓を持たず,卵黄嚢における造血と血管形成が障害されていた.Klf6-/-ES細胞では,in vivoでの観察に一致して,血管 内皮細胞を含む血球系の分化に障害を認めた.また,Klf6+/+ES細胞にKlf6を強発現させる事により,ES細胞の血球系への分化が促進され,Klf6は血球系において分化誘導能を持つ事が示された.一方,Klf6-/-ES細胞の内胚葉系への分化に着目すると,三胚葉へ分化する前のステージから分化の遅延が認められた.これに一致して内胚葉の前駆細胞のマーカーであるHnf3bの発現も遅延し,以降の分化は顕著に障害されていた.【結論】癌抑制遺伝子Klf6は,肝細胞系譜の分化において比較的早期の段階で分化促進的に関与していると思われた.このシグナル経路を解析する事により,再生医療の臨床応用に向けて肝細胞の分化誘導を促進するメカニズムの解明につながる可能性が示唆された.
索引用語