セッション情報 口演

肝癌 基礎

タイトル O-156:

肝細胞癌発症と進展におけるM-CSFの関与と治療への応用

演者 河野 寛(山梨大学第1外科)
共同演者 原 倫生(山梨大学第1外科), 古屋 信二(山梨大学第1外科), 赤澤 祥弘(山梨大学第1外科), 平山 和義(山梨大学第1外科), 中田 裕紀(山梨大学第1外科), 藤井 秀樹(山梨大学第1外科)
抄録 【はじめに】ヒト肝細胞癌において背景肝のmacrophage colony stimulating factor(M-CSF)発現と肝発癌は正相関するが,その機序は未だ不明である.今回,肝発癌ならびに進展とM-CSFの関連についてマウスを用いて検討した.【方法】検討I:op/opとlittermateマウス(LT)を用いジエチルニトロサミン(DEN)を腹腔内投与し炎症性肝発癌モデルを作製し,発癌率を検討.肝内活性化Mφ分布と血管新生を免疫組織染色法で,肝MφのM1/M2比をFACS法とRT-PCR法で検討した.検討II:分離肝Mφと血管内皮細胞(VEC)をM-CSF存在下で共培養し,増殖を検討した.検討III:C57BL/Jマウスに同種のマウス肝癌細胞株であるMH134を皮下移植するモデルを作成した.移植後,M-CSF受容体拮抗剤であるGW2580を連日2週間経胃投与群と非投与群を作成し腫瘍の増殖を検討した.【結果】検討I:LTと比較し,op/opでは発癌率,腫瘍数,最大腫瘍径のいずれにおいても有意に低下.活性化Mφの分布は,LTでは正常肝組織・腫瘍内部ともに認められるのに対して,op/opでは腫瘍内部とその辺縁部においてのみ認めた.DEN投与後の発癌マウスでは,op/opにおいてCD204+/CD68+比と,CD163 mRNA発現がLTと比較して有意に低下.腫瘍内の新生血管はLTにおいて有意に増加.検討II:VECはM-CSFと肝Mφの共培養条件で増殖が最も亢進した.検討III:肝細胞はGW2580非投与群と比較し,投与群で有意に増殖抑制を示していた.【考察】背景肝に発現するM-CSFは,M2Mφの比率と血管新生を増加させることで腫瘍増殖を促進し,肝細胞癌再発期間を短縮させている可能性が示唆された.また,M-CSF受容体を標的とした肝細胞癌治療の可能性を示唆した.
索引用語